講座紹介

講座紹介

Department Introduction

講座の歩み

弘前大学 大学院医学研究科 麻酔科学講座は、1965年6月に尾山力初代教授が北海道大学から赴任して発足しました。その翌年、一期生として松木明知先生をはじめ、木村邦之先生、高沢鞆子先生が講座に入り講座の運営の基盤を作られ、以来50年の伝統を持つ講座となりました。そして、2004年9月1日に、当講座出身の廣田和美先生が第三代目教授として就任しました。当講座は本州最北端青森県の弘前市にありながら、全国の麻酔科の先駆けとして多くのことを行ってきました。開設当初からの手術部回復室での術後患者管理、麻酔科外来(ペインクリニック)の開設(1966年)、術前回診時の麻酔解説ビデオ供覧(1981年)、集中治療部開設(1983年)、全静脈麻酔を中心とした全身麻酔管理への移行(1989年)などがあげられます。2013年には、Surgical ICUの造設により集中治療部が16床となりました。2015年には講座開講50周年を迎え、全静脈麻酔PRKの実際―超音波ガイド下末梢神経ブロックとの組み合わせ―を刊行しています。また、日本麻酔科学会、集中治療学会、ペインクリニック学会の東北地方会をはじめ、2016年には第3回日本区域麻酔学会を主催しています。

運営方針

臨床麻酔、集中治療、ペインクリニックの麻酔科学の主要3要素を駆使した質の高い周術期管理を中心に、呼吸不全や循環不全など重症患者の集中治療管理、慢性疼痛・癌性疼痛患者のペインコントロール、緩和ケアなども積極的に行って、今後とも地域医療に貢献していきます。

将来の展望

2005年6月の日本麻酔科学会総会の特別講演で、UCSF麻酔科教授のRD Miller先生は、New York Timesの記事を引用し、近い将来に医学は飛躍的に進歩し、遺伝子解析が進む結果、予防医学が発達し内科医の需要は少なくなることと、麻酔科に関しては、麻酔が完全にコンピュータ制御化され、麻酔科医の手術室での業務は大幅に減少し、集中治療、ペインクリニックなどを中心とした周術期管理に専従するだろうとの予測を述べられていました。ここまで、急速に変化するかどうかはわからないものの、麻酔科医は将来、手術室に縛られず中央診療部門として種々の部署で必要とされ業務は多岐にわたるようになると予想されます。当講座では、麻酔科医は麻酔科専門医のみならず、集中治療認定医、ペインクリニック認定医、救急科専門医、AHA ACLSインストラクターなどの認定医や専門医をさらに取得することをすすめています。

講座の行事

県内の当講座主催または共催の研究会として、青森県臨床麻酔研究会、集中治療研究会、青函ペイン研究会、SIRS研究会を行っています。その他の行事としては、新年会や歓送迎会、麻酔科・手術部・集中治療部合同観桜会、同門会、各部門毎の忘年会などがあります。


当講座のシンボル – Symbol of Our Department –

講座のシンボルの画像

この彫刻は、弘前大学医学部名誉教授(麻酔科)の松木明知先生が、下記の理由で当講座のシンボルマークとしたものです今後なお先生の御意向に添えるよう、このマークを引き継いでいきます。

著書 学と術の周辺から・・・

彫刻の題材はギリシャ神話から採ったもので楽器を手にするアリオーンがイルカに助けられている図である。アリオーンは紀元前7~6世紀の人で、コリントス王ペリアンドロスに仕えた宮廷楽人兼詩人であった。彼はシシリー島で音楽のコンテストに出たいと王に願い出たが、王から「勝利を得ようとする者は勝利を失うのだから」と諭された。しかしアリオーンは「放浪の生活こそ詩人の自由な心にふさわしい」と王の制止を振り切ってシシリー島に出かけ、コンテストに勝ち多くの賞品を得た。しかし彼は帰路その賞品を水夫たちに奪われ、最後の一曲を歌わせてから生命を奪って欲しいと彼らに懇願し、ようやく許され一曲を詠じた。歌い終わったアリオーンは海中に身を投じたが、彼の歌に魅せられた一匹のイルカがアリオーンを背中にのせて岸辺に連れていった。宮中に戻ったアリオーンは一部始終をペリアンドロス王に語ったので、王はほどなく港に帰った水夫たちを追放したという。この話はギリシャ神話の中でも有名であり、英国の詩人パイロンも「ハロルド卿の巡礼」の中に歌い込んでいる。しかし何故オーポリヌスがこのアリオーンとイルカの図を自分の社のマークにしたかは分からない。当時オーポリヌスと並び称された出版社アルダス社のマークにもイルカが描かれている。出版、印刷とイルカが何か関係あるのかも知れない。図柄の周辺にはラテン語で“Invia Vituti Nulla est Via”とある。これは英語でいうと“No pathway is impenetratable for virtue”の意味である。日本語で言うと「徳は孤ならず」である。ひたすら一生懸命善を積み重ねていれば必ずそれは人に知られるようになるというのである。

私がオーポリヌスのマークを採用したのには二つの理由がある。一つには教室から印刷物つまり論文がどんどん出るようにとの願いを込めたものであり、二つには麻酔科の仕事は地道であるが確実に認められつつあり、必ずや一般の方々も十分にわれわれの仕事を理解してくれるであろうという強い期待を込めたものである。

麻酔科なしには多くの最先端の医療は施行できないことを教室員の一人一人が理解して、誇りをもって毎日の仕事を行って欲しいと思う。