教授挨拶

Greeting from Introduction

 

昭和61年本学卒業で、平成16年より当講座主任教授に昇任した廣田和美と申します。

私は千葉県出身で、家系的に千葉県人以外の遺伝子が数百年に渡って入っていない生粋の千葉県人です。そんな私が何故弘前に残ったのかと言うと、一つには弘前という町を気に入ったからです。雄大で美しい岩木山が近くに見え、煙突は風呂屋だけという風景に、来た当初、感動しました。都会の人混みや空気の悪さにはうんざりしていましたから、弘前の落ち着いた雰囲気に安らぎを覚えました。勿論、雪の多さには閉口しますが、雪掻きも冬の運動不足解消の為の大事なExerciseと思えば、嫌ではなくなりました。もう一つの理由は、研修するに当たり、同級生と部活の先輩が多数いることで縦横の繋がりが密であったことです。当然、人脈が密な程、有意義な研修が行えます。最近の学生は、親の強い要望で地元に帰りますが、自分は高校の同級生が大企業に就職して全国、海外の支店に散らばっていたことから、地元に直ぐに帰る気はなく、親には大企業株式会社国立大学弘前支店にいると思ってくれと言っていました。

次に麻酔科を選んだ理由ですが、全身管理、救急、意識制御の三つに興味があったからです。実は、臨床実習で麻酔科を回る前は麻酔科に全く興味は無く、回って初めてここに自分のやりたいことが全てあると気づき、入る決心をしました。この経験から、講義だけで麻酔科を理解して貰うことは難しいと思い、臨床実習を通じて理解して貰おうと努力しています。緊急手術時等、非常に厳しい状況で懸命な全身管理を行なっている際に、ホメオスターシスに関わる神秘な部分に触れた感じがすることが稀にあり、上手く管理出来ると感動と達成感に満たされ、得るものも大きく、やりがいを感じます。皆さんも麻酔科に入って是非実感して下さい。

教授挨拶

教授挨拶2

研究は、気道平滑筋関連と全身麻酔機序等の中枢神経系の研究を主体に行ってきました。世界初の内視鏡を用いた直視的気道径評価法の開発で、世界的評価を得ました(Br J Anaesth 1997; 78: 583-5)。全身麻酔機序では、現在こそ神経網からの解明が主流ですが、受容体説が中心であった2000年当時から睡眠覚醒に係るノルアドレナリン神経網説を提唱していました(Br J Anaesth 2001; 87: 811-3)。このような業績が評価されてか、2001年英国王立麻酔科学会(RCA)特別会員、2015年米国大学麻酔科医会(AUA)正式会員に選出されました。両方の学会員に選出された日本人は私を含めて4人しかおらず、非常に光栄に思っています。これら称号を頂けたのは、私自身の努力もありますが、それ以上に初代尾山教授(AUA会員)と2代目松木教授(RCA会員)が世界的な名声を得ていたことと、御二人が時間をかけてきちんとした講座の体制を作られたことの御蔭であると思っています。御二人の業績の高さは、著明な業績を残した弘前大学の偉人11名(医学研究科4名)が紹介されている大学資料館「先人の業績」コーナーに、御二人が紹介されていることからも明らかです。

当講座で誇れることの一つに、臨床でいくつもの点で時代の最先端を行っている点です。尾山教授は、世界で初めて内分泌と手術侵襲・麻酔との関係を解明し、この功績は2014年Can J Anaesthに掲載された”A harbinger of modern anesthesia”で讃えられています。松木教授は、日本にBISモニターと全静脈麻酔を導入し管理法を確立しました。私の代では、当講座OBの佐藤裕先生を中心に超音波ガイド下神経ブロックの普及に努め、2004年に弘前で日本最初のワークショップを、2016年には日本区域麻酔学会を開催しました。

当講座一番の特徴は、国際交流です。現在、米国・ワシントン大学、英国・レスター大学とインペリアルカレッジロンドン、スコットランド・アバディーン大学、アイルランド・ダブリン大学、フランス・ニース大学、ドイツ・ハノファー医科大学とフライブルグ大学、イタリア・フェラーラ大学、韓国釜山大学、中国・北京大学、ハルピン医科大学と北京人民解放軍病院等と密な交流を行なっており、毎年7-10名海外から訪問者があります。

2015年に当講座は50周年を迎え、私の任期も後半の10年に突入しましたが、未だ青森県は、麻酔科医の深刻な人員不足に喘いでいます。元々当講座は他県出身者が多いですが、今後も地元は勿論、他県出身者を大歓迎します。専門医取得後は、2年前に地元に帰ることを表明すればそれを尊重し、希望があれば就職先も斡旋します。現在まで、多くの教室員が問題無く地元に戻り活躍しています。私自身が千葉出身で、この点はよく理解していますので、ご心配なく。

学生、研修医の皆さん、是非我々と共に当講座で麻酔科学を極めましょう!

弘前大学 大学院医学研究科
麻酔科学講座
教授  廣 田 和 美