研究プロジェクト

松﨑康司

研究課題

間葉系幹細胞の免疫調整作用による新規乾癬治療法の開発

概要

乾癬は、サイトカインによる「負のスパイラル」によって生じる炎症性皮膚疾患である。抗サイトカイン療法は有効だが、副作用として感染症が問題となる。申請者らは、免疫調整作用をもつ間葉系幹細胞に着目し、乾癬モデルマウスに局所投与したところ、過角化、紅斑は著明に改善し、誘導されたIL-17、TNF-αの発現も抑制することを明らかにした。本研究課題ではこの研究をさらに発展させ、病変に集積する間葉系幹細胞の細胞接着分子の解析、幹細胞から産生されるサイトカインの樹状細胞、リンパ球に与える影響を解明する。自己の細胞を利用するため拒絶反応もなく安全に行える治療法の開発につながる画期的な研究である。

金子高英​

研究課題

新しい手法を用いたヒト乳頭腫ウイルスによる皮膚病変の発症機構の解明

概要

ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の関連する悪性や良性の皮膚病変は多いが、HPV の感染から発症に至る機序に関しては不明な点も多い。

本研究では、1)その悪性病変で、高リスクHPV の型、染色体へHPV の挿入、癌関連遺伝子の変異の病変形成への関与、2)難治性良性病変での低リスクHPV の染色体への挿入や癌関連遺伝子の変異、3)HPV のメチル化の病態への影響、の3点を新しい手法を用いて解明する。

会津隆幸

研究課題

230kDa類天疱瘡抗原1の接着因子としての機能解析と免疫原性獲得機序の究明

概要

水疱性類天疱瘡は、表皮細胞ヘミデスモゾームに対する自己免疫性水疱症である。主要免疫原であるBP180のNC16Aの他に、BP230に対する自己抗体が認識されることがある。しかし、その詳細な作用機序は不明である。近年、BP230遺伝子変異による表皮水疱症が報告され、BP230タンパクが表皮―真皮接着に重要な機能を果たしていることが判明した。申請者らが作成したBP230欠損マウスの経時的観察より、ヘミデスモゾームの脆弱性が重層表皮細胞の不安定化を招き、炎症が惹起されると考えた。申請者らは、①表皮細胞接着タンパクの量的質的変化の解析、②外的刺激侵入による炎症発症の機序とその予防法の確立、③BP23欠損表皮細胞の遊走能亢進の創傷治癒に与える影響の解明、を目的として本研究課題を立案した。また、④水疱性類天疱瘡における抗BP230抗体の病原性、水疱形成の機序も並行して究明する。既存治療に難渋するBP患者への新規治療法確立につながる画期的な研究である。

中島康爾

研究課題

メレダ病における過角化機序の解明と新規蛋白補充療法の開発

概要

メレダ病は常染色体性劣性の掌蹠角化症でありその原因遺伝子がSLURP1 遺伝子であることが明らかにされている。本研究の目的は、SLURP1 の欠損により表皮細胞の過度な角化に至る機序を明らかにすること、ならびに合成を検討することである。

赤坂英二郎

留学中

研究課題

概要

六戸大樹

研究課題

皮膚発癌におけるヒトパピローマウイルスE6/E7の役割とCD55陽性細胞との関連

概要

子宮頸癌においては、ヒトパピローマウイルス(HPV)が発癌に深く関与していることは周知の事実であるが、皮膚有棘細胞癌(SCC)、Bowen病をはじめとする表皮角化細胞由来の腫瘍においてもHPVがその発生に関与していることが指摘されている。しかし、子宮頸癌のような粘膜上皮由来のHPV発癌と比較し、表皮角化細胞における発癌機序についての研究は未だ発展途上であり、未解明な点が多い。これらの一端を解明できれば、将来的にHPV関連皮膚SCCの新規治療法開発や、発癌予防のためのワクチン開発につながる可能性がある。以上より、本研究においては、(1) 本邦の表皮角化細胞由来腫瘍において発癌に深く関わるHPVの型を明らかにすること、(2) 表皮角化細胞におけるHPV発癌機序を、最近報告されたCD55分子との関連に着目して解析すること、(3) HPV発癌モデル細胞をマウスに移植し、HPV蛋白(E6/E7)が転移能などの腫瘍形質へ与える影響を解析すること、が目的である。

滝吉典子

研究課題

カテプシンCに焦点をあてた抗悪性腫瘍剤による手足症候群の病態解明

概要

手足症候群は抗悪性腫瘍剤による皮膚障害の一症状で、主に手や足に生じる皮膚症状を総じて呼称されている。軽度の刺激感や発赤のみでとどまるグレード1 から、高度な皮膚の角化や水疱形成、潰瘍形成などを引き起こし、日常生活に支障をきたすようなグレード3 の重症度に至る症例もある。これら手足症候群が発症する機序については、未だ明らかになっていない。我々は、カテプシンC の抗体を用いた免疫組織化学的検索法で、健常人皮膚にカテプシンC が発現しており、パピヨン・ルフェーブル症候群患者の皮膚では発現がないことを確認している。本研究の目的は、手足症候群における掌蹠の炎症や過角化のメカニズムが、酵素カテプシンC とどのように関連しているかを明らかにすることにある。

是川あゆ美

研究課題

母体血清中の胎児DNAを標的とする重症遺伝性皮膚疾患の画期的な出生前診断法

概要

現在、行われている遺伝性皮膚疾患における出生前診断では、絨毛や羊水細胞からDNAを採取し、遺伝子診断が行われるが、いろいろな問題点がある。本研究の目的は、重症の遺伝性皮膚疾患において、母体の血清DNA中の胎児DNAを標的として、より簡便で、よりリスクの少ない画期的な出生前診断法を確立することにある。本研究の独自性は、その遺伝子診断に新規のPCRの技術であるmultiplex droplet digital PCRを用いる点、母体から妊娠期間中に経時的に採血を行い、複数回にわたって遺伝子検査を行う点である。そのために、XY染色体による性別の鑑別診断、VII型コラーゲンのSNPを用いる判定実験、そして実際に劣性栄養障害型表皮水疱症患者での出生前診断を行う。

皆川智子(併任)

研究課題

スピンラベル法による遺伝性角化異常症の角質の構造異常の解析

概要

昨今の遺伝性角化異常症解明の進歩は著しく、多くの原因遺伝子が明らかとなり、それに伴いあたらしい疾患名の提唱、従来の疾患名の変更、分類の改変が、日進月歩に行われ、我々のグループは本症に関連する報告を多数行ってきた。一方、近年我々のグループはスピンラベル法を角質の機能解析に用いて、乾癬患者における角質の構造異常を報告した。そこで、遺伝性角化異常症患者やそのモデルマウスの角質の構造異常をスピンラベル法で明らかにし、それらの発症機構解明や新規治療法の開発に発展させることが、本研究の目的である。