研究プロジェクト

  1. 真皮線維芽細胞からアプローチする毛髪異常疾患の原因究明
    中野 創

    毛髪異常疾患のモデル動物は多数知られているが,弘前ヘアレスラットは毛の異常と乳腺退縮を示す唯一の突然変異ラットである.乳腺の退縮はアポトーシスにより生じ,転写因子STAT5A の機能に障害があることが判明したが,体毛の異常がなぜ生じるのかは未だに不明である.我々は本ラットの線維芽細胞の増殖能が低く,継代初期に多核の細胞に形態が変化することを新たに見出した.そこで,”線維芽細胞の異常が毛の異常の原因になっている”という独創的な仮説のもとに,毛髪異常疾患の原因究明,新規治療法開発をめざす研究である.

  2. ①間葉系幹細胞による新規乾癬治療の開発
    ②ウイルスセンサーRIG-I の腫瘍細胞抑制への応用
    ③表皮水疱症の真皮再構築

    松﨑 康司

    ①間葉系幹細胞による新規乾癬治療の開発
    間葉系幹細胞は、組織再生機能とともに抗炎症サイトカインによる免疫抑制機能を持つと言われている。また、傷害・炎症部位に優先的に集まるホーミング効果を有し、効率よく抗炎症作用を発揮する。乾癬の皮膚病変は、リンパ球、樹状細胞産生の炎症性サイカインにより形成されるが、間葉系幹細胞を病変部位に導くことでその環境を改善することが可能であると考えています。

    ②ウイルスセンサーRIG-I の腫瘍細胞抑制への応用
    ウイルスセンサーであるretinoic acid-inducible gene-I (RIG-I) は、シグナル伝達を介しIFNの発現を誘導し、またそのIFNによりRIG-I発現がさらに増強することが判明している(RIG-Iのフィードバック効果)。この持続的なRIG-Iならびにサイトカイン発現増強が、ウイルス感染を最小限に止める生体防御機構の中心的役割を果たしている。そこで、RIG-Iのフィードバック効果をウイルス非感染時に人工的に起こすことで、局所的な免疫賦活効果が得られると考える。悪性腫瘍、特に悪性黒色腫(メラノーマ)に対する有効性を、マウスを用いた実験で検討中である。

    ③表皮水疱症の真皮再構築
    栄養障害型表皮水疱症は、VII型コラーゲンの欠損のより一生涯水疱が生じる遺伝性疾患である。患者由来の細胞を使い外力に強い人工的な真皮・脂肪組織を再構築することは、水疱形成を抑制し瘢痕の予防になると考える。また、患者本人の細胞であり、拒絶反応もなく安全に行える治療である。

  3. 新しい手法を用いたヒト乳頭腫ウイルスによる皮膚病変の発症機構の解明
    金子 高英

    ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の関連する悪性や良性の皮膚病変は多いですが、HPV の感染から発症に至る機序に関しては実は不明な点も数多くあります。そこで我々は、悪性腫瘍において、高リスクHPV の型、染色体へHPV の挿入、癌関連遺伝子の変異の病変形成への関与に関する基礎的研究を行っています。

  4. 鮭鼻軟骨プロテオグリカンによるTh17細胞を標的とする乾癬の画期的治療法の開発
    会津 隆幸

    近年、鮭鼻軟骨から精製されたプロテオグリカンが、潰瘍性大腸炎や関節リウマチの動物モデルにおいて、その病変を抑制することが明らかとなり、その機序としてTh17 細胞の抑制が示されている。そこで、皮膚科領域の生活習慣病であり、Th17 細胞が病態に強く関与する乾癬について、鮭プロテオグリカン投与により乾癬病変が抑制されることを乾癬動物モデルで確かめ、さらにその免疫学的機序についても解析する。加えて、実際に乾癬患者での内服治療を行い、生物学的製剤治療の補助療法としての可能性も検討する。

  5. ①栄養障害型表皮水疱症における末梢血単核球から分離したmRNAを用いた画期的遺伝子診断法
    ②栄養障害型表皮水疱症の発症メカニズムの解明

    赤坂 英二郎

    ①栄養障害型表皮水疱症における末梢血単核球から分離したmRNAを用いた画期的遺伝子診断法
    栄養障害型表皮水疱症(DEB)は,VII型コラーゲンをコードするCOL7A1の変異により生じる難治性遺伝性皮膚疾患である.当科の遺伝子診療班ではこれまで200を超えるDEB家系についてCOL7A1変異を同定している.DEBの遺伝子診断は,通常末梢血白血球よりgenomic DNAを用いて行うが,変異のタイプや部位によってはgenomic DNAのみではmRNAレベルでの変化を解明できないことがある.mRNAレベルでCOL7A1変異検索を行なうためには,一般的に皮膚組織からmRNAを抽出することが必要になるが,われわれは末梢血単核球中にもCOL7A1 mRNAが発現していることを明らかにし,末梢血単核球より抽出したmRNAを用いて低侵襲かつ正確にCOL7A1変異を同定する遺伝子診断法を考案した.この画期的な遺伝子診断法は,これまで明らかになっていなかったDEBの遺伝子型-表現型の相関や,発症メカニズムの解明に大いに役立つものと考える.

    ②栄養障害型表皮水疱症の発症メカニズムの解明
    栄養障害型表皮水疱症(DEB)は,生下時より軽微な外力により水疱や難治性潰瘍の形成を繰り返す遺伝性皮膚疾患であり,VII型コラーゲンをコードするCOL7A1の変異により生じることが明らかになっている.しかしながら、同じCOL7A1変異を有している家系内や家系間でも、臨床病型が著しく異なることが少なくない.われわれは、このような家系を集積し,次世代シークエンサーをもちいた遺伝子変異検索を行なうことで、DEBの発症や重症度に関与するVII型コラーゲン以外の遺伝的な因子の同定を試みている.そのような遺伝的因子が明らかにすることで,DEBのみならず、多くの遺伝性水疱性疾患の病態解明や新規治療法開発が可能になると考えられる.

  6. 血中(組織)VEGFと組織VEGF receptorを介したシグナル伝達機構が、血管腫の肉眼的形態差異や皮膚悪性腫瘍の血管増生にどう影響を与えているかについての検討
    是川 あゆ美
    血管腫は生下時または生下後より生じる血管成分から成る良性  腫瘍であり,同じ疾患でも形態はさまざまに異なる。また、悪性腫瘍では血管増生が起きていることが多く,血管増生が亢進することで腫瘍組織に酸素と栄養を供給し腫瘍が増大する.これらの血管成分の増生に関しては,VEGF (vascular endothelial growth factor)が大きく関与している.このVEGF にはいくつか種類があることが分かっているため,このVFGF familyとVEGF receptorとの関わりが良性/悪性腫瘍組織内でどのように発現しているかを検討することで,血管腫の表現型の違いや悪性腫瘍の進展速度の違いの病因の発見につながる可能性がある.