<異形成(dysplasia)とは>

 骨髄における異形成とは、異常なクローン性の造血幹細胞が生じた結果、三系(赤芽球、顆粒球、巨核球系)の造血細胞のうち、少なくとも一系以上に、形態的、機能的に異常な血液細胞が骨髄で産生されることを意味する。

異常なクローン幹細胞は赤血球、白血球、血小板に分化する能力を持っている。しかし産生された血液細胞は異常で、十分な働きをすることができない。骨髄における血液細胞の産生は亢進するものの、末梢血では血球減少がみられる。これは「無効造血」と呼ばれ、骨髄異形成症候群の特徴である。

1 赤芽球系の異形成(dyserythropoiesis)
赤芽球の成熟異常

多数の多染性赤芽球とともに核小体(矢頭)を持った前赤芽球(矢印)や好塩基性赤芽球(2本矢印)が認められる。

成熟の不良

細胞質は青みがかった灰色で、多染性赤芽球に似る。一方、核には核小体が残っており、好塩基性赤芽球の核によく似ている。

このように、細胞質の成熟と核の成熟のアンバランスがみられる。

右方の矢印で示した赤芽球は、多染性赤芽球としては非常に大型で、「巨赤芽球様変化」と呼ばれる。

左方の、矢印で示した赤芽球は、細胞質は正染性赤芽球に似ているが、核の濃縮が不完全で、多染性赤芽球の核と似ている。

核分裂の異常1

分葉したした異常な核をもつ赤芽球

核分裂の異常2

分葉したした異常な核をもつ赤芽球

ベルリンブルー染色

赤芽球の核周囲を、環状に取り巻くように、青く顆粒状に染色像が認められる。

このような細胞は環状鉄芽球(ringed sideroblast)と呼ばれ、ミトコンドリアに鉄が沈着したものといわれている。

2 骨髄球系の異形成(dysgranulopoiesis)
骨髄芽球の増加

中央に2個の骨髄芽球が見られる。

A:前骨髄球; B:後骨髄球; C:多染性赤芽球; D:リンパ球

核の異常

環状核の好中球(矢印)

核の異常

核の過分葉した好中球(矢印A)。

他の核の異常として、偽ペルジャー・ヒュエット異常、巨大桿状核好中球も知られてる。

顆粒の減少や脱落などが見られることがある。

B:単球; C:骨髄芽球

3 巨核球系の異形成(dysthrombopoiesis)
微小巨核球(micromegakaryocyte)が中央にみられる。

微小巨核球は、好中球の2倍以下の大きさの巨核球である。

赤血球より大きな血小板である、巨大血小板が見られることもある。