学生・研究医の方へ

トップページ > 学生・研究医の方へ > 留学だより

留学だより

留学便り
小児科学講座 助教 津川 浩二

留学便り  平成二十七年十一月よりイタリア北部の都市ミラノにあるFondazione IRCCSCaʼ Granda Ospedale Maggiore Policlinico, Nephrology, Dialysis and Renal Transplant にて、Piergiorgio Messa 教授のもとで、腎糸球体疾患に関わる基礎研究に参加させて頂いています。こちらの教室はミラノ大学医学部関連病院の臨床部門ですが、DʼAmico 基金腎研究所の基礎部門を取り込む形で基礎研究も活発に行われています。研究室の主なテーマは、慢性腎疾患における骨代謝、ポドサイトの機能解析、ミラノ工科大学との共同研究によるnanoparticleを用いたdrug delivery systemで、いくつかのグループに分かれて研究を行っており、私は小児難治性腎疾患のひとつである巣状糸球体硬化症の病因病態解析を目的に、ポドサイトを扱うグループに所属しています。
 研究室にはMD, PhDの他、ミラノ工科大学留学生、医学部学生、臨床検査技師を目指す学生等、多くの方が常時出入りし、また国籍もヨーロッパ各地や中国、日本の先生がおり、大変賑やかです。ほとんどが女性で、家庭を持ちながらも素晴らしい仕事をしています。イタリア人は一般的にあまり働かないというイメージが定着しているようですが、実際はそうではありません。朝は決まってエスプレッソからスタートし、イタリアンを感じさせますが、その後は仕事に集中し、時に激しいディスカッションも始まります。イタリア語はほとんど話せず、英語も片言である私にも、こちらの先生方は嫌な顔をすることなく丁寧に対応して下さるのですが、ディスカッションとなるとラテンの血なのか、どんどん声が大きくなり皆一斉に発言し始めます(しかもこの状況では自然にイタリア語へ)。私にとっては困った状況ではありますが、ただ最後は笑いながら明るく終了となるので、本当に雰囲気の良い研究室です。現在いくつかの仕事を任せられるようになりましたが、日本人は真面目な人種と思われているようなので、それに応えるべく丁寧に、正確に仕事を仕上げるよう心がけています。
 昨年の十一月に渡欧したものの、欧州で発生している移民問題の影響もあり、ビザ変更のため一時帰国するなど、ようやく本年三月頃から本格的にスタートすることができました。まだ半年程しか経過していませんので大きなことは言えませんが、研究でも私生活でも貴重な経験をしていることは間違いありません。現在は実験に追われる日々を送っておりますが、帰国後もこの経験を研究、また臨床にも生かしていきたいと思います。最後に、人手不足の中、快く送り出してくださった伊藤教授、小児科講座の先生方、またその他関係者の皆様に心より感謝申し上げます。


ミラノ留学便り
小児科学講座 助教 渡邊 祥二郎

 平成14年卒の小児科の渡邊と申します。平成25年7月よりイタリア・ミラノにありますD’Amico 基金腎臓病研究所(Fondazione D’Amico Per la Recerca Sulle Malattie Renali, Dr. Maria Pia Rastaldi)へ留学しており、紙面をお借りして留学生活などをご報告させていただきます。
 当研究所はDUOMO やガレリアのあるミラノ市の中心街にほど近く、ベルルスコーニ元首相もお世話になった裁判所の近所にあります。大学とは独立した基金で運用されておりますが、ミラノ大学医学部の関連病院内にラボを持ち、臨床検体や医師や学生など人や物の出入りが激しく密接な関係を持った研究室です。主な研究テーマは糸球体濾過障壁の構成細胞であるpodocyte の機能解析で、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)などの糸球体病変におけるpodocyte 障害についてイタリア国内だけでなくヨーロッパ諸国やアメリカの施設とも活発に共同研究を行っております。現在私は培養細胞やアドリアマイシン腎炎モデルマウスなどを用いて様々な刺激因子によるpodocyte の細胞骨格や、アルブミン透過性(尿蛋白モデル)への影響などを調べております。また新しいプロジェクトとしてpodocyte へのdrugdelivery system の構築を目標に、ミラノ工科大学と共同でnanoparticle の作成、評価を行っており、工科大学で新しい候補material が作成される毎にpodocyteへのup takeの評価、細胞毒性試験等を行って候補物質を絞る作業を繰り返しています。私にとっては初めての分野であり最初は戸惑いましたが、小児患者への長期ステロイド投与による全身的な副作用を思うと、糸球体細胞へのより特異的で効果的なdrug delivery が可能になることは大きな意味があり、毎日新鮮な気持ちで勉強させていただいております。また工学系の先生方と共同で仕事を進めるということも大変貴重な機会であり、喧喧諤諤のイタリア語と英語でのdiscussionに四苦八苦しながら参加しています。
ミラノでの留学生活について…
 ミラノ市はレオナルド・ダ・ビンチの「最後の晩餐」、スカラ座、サッカーなどで有名な北イタリアの中心都市です。ちょうど長友選手や本田選手が活躍した時期に滞在が重なりました。ファッションでも有名な街のようですが私にとっては別世界です。消費税が日本より高い(20%くらい?)分やや物価が高く感じますが、ピザやジェラートなど手の届くイタリアライフは十分楽しめます。
 ラボの大ボスは月の半分はイタリア国内だけでなくヨーロッパ、アメリカのどこかに出張しているようなactive な先生です。私の直属の上司は中国出身の先生で、他にイタリア人、日本人の先生、卒業論文作成のため通っている学生さんなど約10名前後?が常に出入りしており、イタリア語(私はカタコト)、英語(やっぱりカタコト)、中国語(漢字での筆談も交えて)、日本語(少しだけ…)が飛び交いにぎやかな毎日です。ラボでは日本人スタッフの先生の存在もあり、日本人は真面目、几帳面との評価をされており、私も「日本人なのに…」とだけは思われないように心掛けています。40分の徒歩通勤でラボにたどり着いた後、9時過ぎから17時まで昼食30分をはさんで細胞の作業や測定、動物舎での薬剤投与などほぼノンストップで作業が続きます。南欧人がみな昼食後昼寝をするとのもくろみは見事に外れました。17時過ぎに撤収し、遠くの教会の鐘の音を聞きながらまた40分歩いて帰宅、実験手順の確認やデータの整理、関連論文に目を通しているとあっという間に1日が過ぎていきます。疲れたときには大聖堂の周りを散歩したり、ときどき近くで行われている音楽会に通って英気を養いまたせっせとラボ通い。研究は一朝一夕には進みませんが、小児の難治性ネフローゼの原因の一つである巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)と直接関係するpodocyte の障害・回復過程を調べることは大変興味深く、時間が経つのがとても早く感じます。 こちらの先生方との交流や海外生活の楽しさ、苦労は私たちにとって大切な経験となっています。また、小児の難治性腎疾患の研究に携わり、少しでも貢献したいと思いながらしずかな勉強の日々をもてたことは生涯の宝となりました。帰国しても診療、研究においてこの経験を生かしたいと思います。医師不足の中留学をお許しくださいました伊藤教授始め小児科学講座および同門の先生方、また留学についてご相談させていただきました諸先生方に感謝申し上げます。


フィラデルフィア小児病院研究留学記
小児科学教室 神尾 卓哉

フィラデルフィア小児病院研究留学記  2012年4 月より米国ペンシルバニア州にあるフィラデルフィア小児病院(CHOP)にて客員研究員として留学しています。今こちらは一年で一番気持ちよくて楽しい季節、夏がやってきました。アメリカはサマータイムを採用しているため日本に比べ日の入りが遅く夜の九時ころまで明るいため、仕事にも遊びにも有効に時間を使うことができます。夕暮れには日本ではなかなか見ることのできなかったホタルがアパート中庭で飛び交い、リスやウサギ、たまにはシカまでも間近で見ることができます。ペンシルバニア州には海はありませんが、郊外には巨大なウォーターパークがあり、2時間ほど車を走らせればニュージャージー州の美しいビーチまで行くこともできます。半年前にも医学部ウォーカーにて近況報告をさせていただいたばかりですので内容が重複してしまいますが、もう一度こちらでの生活および研究につきまして簡単にご紹介したいと思います。
 私の留学先はその名の通りフィラデルフィアのダウンタウンにあります。18世紀まで北米最大の都市であったフィラデルフィアは、独立戦争時に独立宣言が起草された独立記念館(世界遺産)など歴史的な観光名所も多く、現在でも全米4、5番目の都市・都市圏を形成しております。また、ニューヨークやワシントンDCなどの東海岸の主要都市へも2、3時間で行くことができ、観光やショッピングにも適した都市であります。CHOPは同窓会の先生であればご存じの方も多いと思われますが、こちらでも全米最古の小児病院として広く知られております。毎年全米病院ランキングの発表時期には『No.1 again.』と垂れ幕が掲げられ、医療スタッフも誇りを持って活発に仕事をされている姿が見受けられます。また、お隣のペンシルバニア大学(UPenn)とはその一部門と思われるほど密に連携しており、多くの学生・職員が互いに行き来し、合同セミナー、共同研究もよく行われています。
 私の所属しているCHOPの血液学の研究室は、Monica Bessler先生、Phil Mason先生夫妻がprincipal investigator(PI)で、他にポスドク7人、テクニシャン5人、秘書さん6人が働いています。夏休み期間には、医学部進学を考えている4年制大学卒業生や在学中の大学生(undergraduate)らが毎年数人研究しています。日本と大きく異なるところは大学生のキャリア意識で、熱意のある学生達はこの夏休みの期間に多くの経験を積み、その後の進路を考えています。
 Bessler先生はCHOPの小児血液の医師であるとともにUPennの血液内科の医師でもあり、両施設にまたがって骨髄不全センターのチーフとして活躍しております。ポスドクのほとんどはPh.D. (M.D.ではない)で、それぞれが分子生物学や生化学の異なった分野を専門とし、世界各地より集まってきています。研究室の主なテーマは、先天性角化不全症(Dyskeratosis congenita;DC)、先天性赤芽球癆(Diamond-Blackfan貧血;DBA)、再生不良性貧血の病因解明で、マウスモデルからiPS細胞、次世代シーケンサーによる遺伝子変異の網羅的解析まで、それぞれの研究者が担当して行っております。現在私は造血不全モデル動物を作り、造血不全の原因と考えられているリボゾームタンパクやMDM2・p53との関係について研究しております。実際行っている手技は、マウスを交配させ、そのマウスの臓器や細胞を用い、PCRやシークエンス、造血幹細胞移植、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー等を使って、免疫学的表現型や機能を解析するといったとても地味な研究をしております。
 ポスドクには、月1回の研究成果のプレゼンテーションと2ヶ月に1回の抄読会発表が課せられ、その準備に追われる日々を過ごしておりますが、週1回の臨床カンファレンスの参加が本来の臨床医としてのモチベーションを保つ上で役立っております。臨床カンファレンスでは、私の所属していた弘前大学血液グループのカンファレンスとレベルの差を感じることがありませんが、症例数の多さ(中東やヨーロッパからの患者様も多い)と、研修医並の知識を持った看護師さんの積極性にいつも驚かされます。
 私生活では、家族を持つほとんどの日本人は自然豊かなフィラデルフィア郊外に住み、ある意味日本より安全で快適な生活を送っております。私たちの住むアパートには約20家族の日本人が住んでおり、夏には月1回BBQパーティを開いて交流を深めております。子ども達は毎日現地の小学校に行きながらも週1回の日本語補習校へ行き、夏はアパート内のプール、冬は近くの山でスキー、スポーツ観戦ととても楽しく過ごしております。日本では週末しかかなわなかった家族との団らん時間もここでは取れております。また、夏には1週間程度の休みももらえており、グランドキャニオンやイエローストーン等の国立公園へも行くことができました。ただ英語については、留学したからといってなかなか上達しませんが(実験している研究者は英語を話す機会がとても少ない!!)、子ども達は家でも英語で話し、『日本語より簡単!』なんて言っております。留学は、私以上に子ども達にメリットがあるかもしれません。
 最後に留学を支援してくださった弘前大学、留学先も決めてくださった伊藤先生をはじめ、大学病院で臨床を支えてくださっている小児科の先生方に心より感謝しております。こちらで得た経験を今後の臨床・研究に活かしていきたいと思っております。

ページトップへ