医学部ウォーカー2007年9月号原稿

 

病態薬理学講座 大学院4年 岸谷正樹

 

25回日本骨代謝学会学術集会 優秀ポスター賞を受賞して

The 25th Annual Meeting of the Japanese Society for Bone and Mineral Research
〜後縦靱帯骨化症(OPLL)骨化進展における血管因子と骨軟骨因子の関連〜
 
 
平成19719-21日に大阪で開催されました第25回日本骨代謝学会学術集会にて優秀ポスター賞を頂きましたのでご報告いたします。また、この場を借りて我々が発表した研究内容について、簡単に紹介させていただきたいと思います。

OPLLの病態には、これまでの家系調査、双生児研究、DNAハプロタイプ解析などから遺伝的背景が強く関与しているとされ,これまでも種々の病因候補遺伝子が報告されてきましたしかし、種々の候補遺伝子が挙げられているにも関わらず、未だその病態解明には至っていません。我々2006年,患者脊柱靱帯組織由来培養細胞OPLL細胞)を用い,RNA干渉法により骨細胞分化特異転写因子Runx2をノックダウンすることによって、それにより調節を受ける遺伝を網羅的遺伝子解析(マイクロアレイ)によるクラスター解析を行い、いくつか同定しました。その結果、骨・軟骨関連遺伝子だけでなく、血管関連遺伝子

の顕著な変動が認められ、なかでもAngiopoietin-1の発現がOPLL群で有意に増加していることに注目しました。この遺伝子は骨化促進刺激にも反応し、またそのノックアウトによってRunx2の調節を受ける遺伝子の発現が抑制を受けることから、Runx2の下流にあってOPLLの骨化進展に関与しているものと思われます。更に我々は、臨床研究において出血時間小板凝固因子異常がないにもかかわらずOPLL患者術後出血量が非OPLL患者のそれよりも有意増加することを示し、現在Europien Spine Journalに投稿中です。 以上より、OPLLに何らかの血管形成関連した遺伝変異があることが示唆されOPLLでは,遺伝的要因を背景とし血管の脆弱性や血管過形成などの微小血管異常が隠されており、内軟骨性骨化を介した骨化進展異所性骨化になんらかの異常をきたしている可能性が推測され、これについて報告させていただきました。

最近、正常な骨代謝においても血管形成が重要な役割を果たしているという認識が高まってきています。OPLLという異所性骨化の過程においても血管関連遺伝子が関与することを報告した点が評価され、今回の受賞につながったものと考えております。

 最後になりましたが、研究を行うにあたり、御協力いただきました整形外科教室の藤哲教授、脊椎グループ諸先生方、病態薬理学教室の元村成教授、ならびに研究の指導をしていただいた同教室古川賢一准教授に感謝申し上げます。なお本研究は文部科学省、厚生労働省の各科研費の支援を受けました。この場を借りて御礼申し上げます。