1. 顔面軟部組織損傷(顔の表面のけが) |
Q : けがをしたら初めから形成外科の治療を受けられますか |
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できます。けがの直後に形成外科を受診し適切な治療を受けることで、最も良い結果が生まれます。ただし、地域や状況によりそれが難しい場合には、後日、傷跡をきれいに変えることができますので、医師に相談して下さい。
Q : 傷跡の治療は時間がたつとできなくなりますか |
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早いうちから適切な治療をうけるのが理想的ですが、たとえ何年も経った傷でも治療は可能です。
Q : 治療期間は、長いのですか |
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傷は細かく丁寧に縫合し、最も適切に治るように治療しますので、抜糸までの期間は、他の科で治療するよりも短いことが多いです。しかし、傷が本当に目立たなくなるには少なくとも約半年はかかりますので、その間、月に1回位の通院が必要になります。
Q : 傷跡は、どうやって治療するのですか |
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原則として、ひきつれている傷(瘢痕拘縮)は手術が必要です。しかし、ひきつれていない目立つ傷跡(肥厚性瘢痕)については、手術を行う場合と、手術を行わない弘前大学形成外科で開発した治療を行う場合があり、傷にあわせて選んでいます。
Q : 頬を切ったので、縫ってもらったのですが、 傷からじわじわつゆが出て困っています |
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頬の深いところにある「耳下腺」という、つばをつくる組織を傷害してしまった可能性があります。耳下腺の治療をきちんと行わないとなかなか治りません。
Q : 目頭の近くを切ったのですが、 その後涙がぼろぼろこぼれるようになりました |
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上、下のまぶたの内側に「涙点」という小さな穴があります。ここから鼻の奥につながる細い管があり、通常は涙はその管を通して鼻の奥に流れます。泣くと鼻水がでるのはこのせいです。この管が傷害されると涙が目からこぼれるようになってしまうため、管の通りを良くする治療を行います。
Q : 傷をきれいにする手術とはどういうことをするのですか |
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傷の大きさと場所により、いくつか方法があります。まず、線状の細い傷の場合、傷を切り取って、縫い直します。独自の縫い方により、目立ちにくい傷にできます。長い傷の場合には、ジグザグの形などに変えたり、しわの向きに合わせることで、目立ちにくくできます。面状の傷の場合には、切り取って縫えれば縫いますが、緊張が強ければ、周囲の皮膚をうまく移動して緊張ができないようにするか、「皮膚移植」を行って治します。
Q : 擦り傷ができたあと、黒ずんだ色になりました |
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2つ考えられます。ひとつは傷の治りの過程で、炎症のため一時的に起こったものです。これは、手術せずとも適切に治療をすれば良くなります。もうひとつは、けがをしたとき砂や泥が傷の中に入ったまま治ってしまったものであり、この場合皮膚の表面を薄く削って取り除く必要があります。
Q : 犬にかまれた後、顔の皮膚の下にしこりができました |
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犬にかまれると、深いところもダメージを受け、強い炎症を起こし、硬くなります。通常は経過をみるだけですが、時に手術が必要な場合があります。
Q : とげを刺した後、いつまでもじくじくしています |
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とげが一部残っていることがあります。取り除かない限りいつまでもその症状は続きます。早く治療したほうがよいでしょう。
Q : 交通事故の後、皮膚の下に硬いものが触ります |
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ガラスなどが中に残っている可能性があります。取り除かないといつまでも痛みが続いたり、膿がついて腫れたりします。
2. 顔面骨骨折 |
Q : 顔面骨骨折とはどういうものですか |
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首から上は主に頭蓋骨というもので構成されており、およそ23個もの骨からできています。頭蓋骨部分はさらに、頭蓋(頭のてっぺんの部分で、中に脳が入っている)と、目、口、鼻などがある顔面骨部分とに分かれます。顔面骨骨折とは、目、耳、口、鼻などがある部分の骨の骨折です。
Q : 顔の骨の骨折は、形成外科で治療するのですか |
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形成外科は比較的新しい診療科であり、これまで形成外科のなかった時代には、関連する診療科、たとえば耳鼻科、眼科、歯科などで治療を行ってきました。最近では形成外科で行うことが多くなっていますが、まだ形成外科を置いていない病院も多いのが現状です。
Q : 顔の骨は、どのような原因で折れることが多いのですか |
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多い原因としては、交通事故、労働災害、スポーツ、それに喧嘩です。最近では、家庭内暴力、いじめ、それにスポーツなどでの受傷が増加しています。
Q : 多い骨折には、どのようなものがありますか |
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頬の骨、鼻の骨、あごの骨、目の周りの骨の骨折などが多く見かけられます。これらは「打撲」により比較的容易に起こります。顔のどの部分を打ったかで、生じる骨折とその程度が異なってきます。
Q : 骨折すると、どのような症状が起こりますか |
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骨折の場所により症状は異なりますが、腫れが強い、押すと強い痛みがある、顔の一部がへこんでいる、鼻血が多い、鼻血が長く続く、目の動きが悪い、ものが二つに見える、口が開けられない、ものがかめない、かみ合わせがずれる、などが起こります。ただし腫れが強いと、骨折によるゆがみ、へこみがわからないことが多く、時間がたって腫れが引いてくるとわかるようになってきます。心配なときは、すぐに医師の診察を受けましょう。
Q : 骨折の治療を行わず、そのままにしておくとどうなりますか |
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骨折の症状がそのまま残ってしまい、顔のゆがみ、へこみ(頬がへこんでいる、鼻すじが曲がっているなど)、目の動きが悪い、ものが二つに見える、鼻がいつもつまっている、かみ合わせが悪い、口があまり開かない、などの症状が残ります。また「粘液嚢腫」といって、いわゆる蓄膿症のような状態になりやすく、この場合、頭痛、頭重感、めまい、集中力不足、不眠などの症状が現れます。何年もたってから、「粘液嚢腫」が大きくなって、おでこや頬が腫れてくることもあります。
3. 熱傷(やけど) |
Q : やけどにはどういうものがありますか |
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やけどは皮膚にお湯などの熱い物質が接触して生じる皮膚の障害です。やけどは1. 熱い液体によるもの 2. 熱い固体によるもの 3. 爆発物によるもの 4. 火炎によるものが多いです。しかし、これ以外にも、電気が体の中を抜けて起こる「電撃傷」、化学薬品で起こる「化学熱傷」、湯たんぽなどに長時間あたることで起こる「低温熱傷」などがあります。やけどを専門に研究する機関ではこれらのやけどのことを熱傷(ねっしょう)と呼ぶように決めています。そこで以降熱傷と呼ぶことにします。
Q : 熱傷の原因は何が多いですか |
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一般家庭では、1歳前後の子供の熱傷が圧倒的に多いです。かつてはストーブ、やかんのお湯が多くを占めていました。最近は暖房器、ポットでの受傷またはカップ麺、浴槽での受傷などに加え、特に目に付くのは、電気炊飯器の蒸気での受傷、コーヒーなどの嗜好品での受傷、そして食事中に熱い液体をひっくり返しての受傷です。電気炊飯器の蒸気での受傷は1才前後に多く、指のひきつれを起こして手術を必要とする場合が急増しています。 これらが起きないようにするため、子供の手の届く場所に熱いものを置かないなど、家族全員で注意しましょう。
Q : 熱傷の傷の深さは、どのような種類があるのですか |
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ふつう1-3度に分類します。1度の熱傷は、いわゆる日焼けの状態と同じで、皮膚がひりひりし、真っ赤になる状態を指します。2度は、浅い2度と深い2度に分かれますが、浅い2度の特徴は、水ぶくれ(水疱)を作ることです。3度の熱傷は、もっとも深い傷で焼けたところが堅く、白く、まるで生気のない皮膚になってしまいます。
Q : どうして、深さが問題になるのですか |
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1度および2度の浅い熱傷は、原則として手術は不要です。しかし、適切な治療を受けないと容易に深くなってしまう場合があります。2度の深い熱傷、3度の熱傷では、手術が必要になることが多くなります。
Q : 熱傷を受傷した場合、どのようにすればいいのですか |
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原則は、受傷直後から大量の水で傷を流すことです。受傷直後から行う必要があります。この目的は、傷を冷やすのではなく、熱源(熱い液体など)を傷から取り除くことです。
Q : 傷を氷水で冷やした方が効果的ですか |
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「水で冷やす」とは、実際には、「水を流す」ということです。冷却の必要はあまりありません。氷水などで冷やすことは、傷にとってはかえって有害です。
Q : 広い範囲の熱傷の人でも、水をかけて良いですか |
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広範囲の熱傷でも、傷に大量の水をかける効果は大きいのですが、体が冷えるという全身の状態の悪化を起こすことがあり注意が必要です。
Q : 着衣の処置はどうすればよいですか |
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熱傷でできた水ぶくれ(水疱)は、着衣の下でできた場合、着衣にくっついていることがほとんどです。この水疱は破かずそのままにした方が傷の治りが良くなります。着衣をただ脱がそうとすると、水疱を破くことになります。着衣の上から水をかけ、着物を脱がさないで病院へ行くのがよい方法です。どうしても破れてしまった場合でも、破れた水疱をそのままにした方がよいです。
Q : 水疱を取り除かない場合、 水疱を取り除いた場合と比べ、どう違いますか |
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水疱を取り除かない場合のほうが、傷の治りが早く、痛みが少なく、化膿することが少ないなど、多くの利点があります。また、傷が後日、盛り上がったり色がついたりすることも少なくなります。
Q : 熱傷の浅い傷と深い傷で、 傷の治り方は、どのように違うのですか |
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浅い熱傷は、「上皮化」という治り方をします。これは傷の周りの皮膚の細胞が傷の表面に広がってきて治るというものです。深い熱傷の場合、「瘢痕治癒」という治り方をします。この治り方は、傷が自ら縮んで小さくなって治るものであり、両者は根本的に治り方が異なります。傷が縮んで治るとひきつれが起こり、範囲が大きいと、体の動きに制限がきてしまうことがあります。このため、深い熱傷の場合には、早めに手術を行った方がよいのです。
Q : 熱傷の治療中の注意点は、どのようなものがありますか |
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1. 感染を防ぐ(化膿を防ぐ):傷を汚したり、ひっかいたりしない。
2. 傷の機械的刺激をさける:傷をひっかいたり、動かしたりすると傷は刺激を受けます。これは傷の治りによくありません。特に、傷が乾きそうになる時期には、一時的に傷のかゆみが強く出ます。この時期に傷をひっかかないことがとても大切です。
3. 傷のうっ血を防ぐ:足の傷などの場合、歩き回ることによって、血の巡りが悪くなります。できるだけ、安静を守り、傷を心臓の高さより高くしておくことが大切です。
Q : 皮ができたら治療は終わりですか |
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じくじくしなくなったばかりの傷は、真っ赤です。この色は、傷にまだ炎症があり、傷自体は落ち着いていない状態であり、この後色々な変化が起きます。特に時間がかかって治った傷は、治った後で「肥厚性瘢痕」といって、盛り上がった傷跡になったり、「瘢痕拘縮」といって、ひきつれた状態になりやすいです。このため、傷がじくじくしなくなっても肥厚性瘢痕予防のための治療や、経過観察が必要となります。
Q : 治療中の傷がとてもかゆくなってきましたが どうしたらよいでしょう |
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熱傷の傷が治りかけになる頃、かゆみが出てきます。これは、一時的なもので、そのうち消えます。しかし、ひっかいてしまうと、その傷はさらにかゆくなります。このため、できるだけひっかかないようにすることが大切です。かゆみに対しては、塗り薬(軟膏)や、飲み薬が用いられることがありますが、あまり大きな効果はありません。傷を冷やす方法は、冷やしているときにはよいのですが、中止するとかえって強いかゆみになります。「とんとん」とたたく方法は、かゆみを抑制する効果としては強くありませんが、傷にあまり刺激にならないということで試しても良い方法と考えます。弘前大学で開発した、強いかゆみにも効果がある治療方法もありますので、詳しくは形成外科の医師に相談してください。
Q : 赤ちゃんの指に熱傷を受傷して、 その後、指が伸びなくなってしまいました |
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瘢痕拘縮(=ひきつれ)が考えられます。曲がったままにしておくと、後日、指の成長障害、機能障害などを起こすことになるため、早めの手術が必要になります。
Q : 昔の熱傷の場所がかゆくてひっかいていたら、 盛り上がってきてしまいました |
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熱傷の傷跡が赤いところは、ひっかけば容易に盛り上がったりひきつれたりしてきます。また、白っぽい傷になっていても繰り返してひっかけば、赤くなり盛り上がってきます。ひっかくのをやめ、治療を行えば、かゆみも消え、盛り上がりやひきつれの発生も予防できます。
Q : 熱傷を起こした皮膚が、次第に白く色が抜けてきました |
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深い熱傷の場合には、このようなことになりやすいです。もし、数ヶ月して色が出てこなかった場合には、手術により治すことができます。ひきつれを伴っていれば手術が必要です。
Q : ずっと昔、熱傷を受傷した部位が、 えぐれて出血するようになりました |
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このような状態を「マージョリン潰瘍」といいます。早めに治療すれば事なきを得ますが、この状態を続けていた場合には、傷から皮膚癌が生じることが多いです。この状態は年輩の人によく見かけられますが、高齢者はおっくうで治療を受けたがらずに、手遅れになる場合も少なくありません。早めに診察を受けましょう。
Q : 深い熱傷で、広範囲を受傷した場合には、 どのような治療になりますか |
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深い熱傷を体の30%以上に受傷した場合などは、死亡することがあります。この死亡原因としては主に体液のバランスが変わることで血液が足りなくなり、「心不全」、「腎不全」になって死亡することが多く、他に「胃潰瘍」が起こったり、血液の固まる成分が少なくなって、出血が止まらなくなることもあります。よってまず、輸液(点滴)を行うことが大切です。しかも、受傷後、できるだけ早期に大量の点滴が必要になります。また外から細菌が進入して、血液中に細菌が繁殖してしまい「敗血症」という状態を引き起こすこともあります。部位や年令などによってはもっと小範囲の熱傷でも生命が危険になる場合があります。深い熱傷の傷は、一般に自分の体から取った皮膚を移植する手術を行い、治療します。
Q : 家族の皮膚で傷を治せますか |
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通常、移植した皮膚が永久に生着する(くっつく)ためには、自分の皮膚、あるいは一卵性双生児の兄弟からの皮膚でなければいけません。他人の皮膚(両親、兄弟など)では、一時的に生着しますが必ず脱落します。しかし、とても広範囲な熱傷を受傷して、生命の危険があるなどという場合には、一時的な効果ですが、他人の皮膚で傷を覆うことがあります。ひきつれの治療で皮膚を植える場合などには、使えません。
Q : 人工皮膚で傷を治せますか |
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人工皮膚は、豚の皮などのことを指しますが、これらは傷を覆って保護するものであり、皮膚として生着する(くっつく)ことはありません。
Q : 培養皮膚というものを聞いたことがあるのですが |
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自分の皮膚の表層にある「表皮」を取ってきて、培養することにより、大きな皮膚として移植に使用することはできます。しかし、生着(=くっつく)しにくい、移植した皮膚が目立ちやすいなどいろいろな問題があるため、利用できるのはごく一部に限られています。
Q : 頭のやけどで大きなはげができましたが治りますか |
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小さなものであればそのままはげた部分を切り取って縫ってしまえます。大きいものの場合、周囲の頭の皮膚の下に風船のようなものを入れ、皮膚を引き伸ばして治す方法があります。