1. 唇裂、口蓋裂の治療


Q : 唇裂とは、どのような病気ですか

 唇裂とは、かつては、「みつくち」、「兎唇(としん)」と呼ばれた病気です。生まれつき上くちびるに割れ目があります。日本人の場合には、500人に1人くらいの割合で生まれると言われています。程度は上くちびるの縁にごく軽い切れ込みが入っているだけの状態から、鼻の底まで割れて、口と鼻がつながっている状態(口蓋裂)までいろいろです。


Q : 治療はどうなりますか
 手術が必要です。1回目の治療は、弘前大学病院形成外科では生後約3〜6ヶ月、体重約6キログラムくらいの時に行います。なるべく早く治したいという気持ちはあると思いますが、治療成績は早すぎても良いものではありません。また、変形の程度によりますが、成長に伴い唇や鼻の形が変化してくるため、成長途中で修正の手術を必要とする場合があります。

Q : 口蓋裂(口の中が割れている)を合併した場合の治療は
 口唇裂とは別に生後1才3ヶ月〜6ヶ月に口の中の手術が必要です。その後、言葉の訓練、矯正治療などが必要になります。中耳炎や虫歯を伴うことも多く、定期的に診察を続け、必要な検査や治療を行います。

Q : 唇裂の治療費用はどうなりますか
 赤ちゃんの時には、医療費が安くなる乳児医療、18才までは国から医療費の給付を受けられる育成医療、などの制度があります。利用できるかどうかなどの詳しい話は、お住まいの役所、役場、保健所や病院の医療相談窓口で聞くことができます。

Q : 親が入っている保険会社の生命保険は使えますか
 一般の生命保険では、生まれつきの病気は保険金が下りないことが多いのですが、種類により利用できる場合があります。契約している保険会社に問い合わせてください。

Q : 退院後の治療は
 手術後に再び変形が来やすいということを考慮して、鼻の形を整えるために、「レチナ」と呼ばれる鼻の装具および、唇の安静のための絆創膏を数ヶ月間使用します。

Q : 入院時の経過を教えて下さい
 検査などのため入院から手術まで数日必要です。手術は約2〜3時間です。手術後4日目くらいから抜糸を始めます。手術後1から2週間は鼻からチューブを入れて栄養をとります。口からものが食べられるようになって退院となります。傷の治りなどによりますが、全部で約3週間の入院となります。

 

2. 耳介の変形


Q : 生まれつきの変形はどういうものですか
 まず大きく分けて大きさの異常を伴うものと伴わないものがあります。大きさの異常を伴うものは、耳がほとんどない「小耳症」、耳たぶがない「耳垂欠損症」、「大耳症」などがあります。これらは手術が必要となります。大きさの異常が無いものには、耳の上の方が頭の皮膚の下にもぐっている「埋没耳」(日本人に多い)や、耳が横に張り出している「立ち耳」、耳が折れ 曲がっている「折れ耳」、耳たぶが割れている「耳垂裂」などがあります。

Q : 耳の形がゆがんでいる場合(大きさの異常がない)の治療は
 生まれてすぐの場合、装具を付けて矯正すれば多くのものは治ります。年令が大きくなるほど治りにくくなるのでできるだけ早く受診することをすすめます。程度によりマスクやめがねがかけられないなどの問題もあり、手術なしで簡単に治療もできることから、是非外来へ相談にいらして下さい。勿論矯正で効果が少ない場合には簡単な手術により良い形にすることができます。この場合、外来手術で通院の治療ができる場合と入院が必要な場合があります。通常3才以上で手術を行っています。

Q : 小耳症の治療は
 通常2回から3回の手術が必要です。1回目は、胸にある「肋軟骨」を耳の形に細工して、耳があるべきところの皮膚の下に埋め込む手術をします。これで、頭にはりついた状態の耳ができます。半年位したら耳起こしといわれる手術をします。これは寝た状態の耳を起こすものです。ともに約1ヶ月の入院が必要です。手術の時期としては、小学校の高学年位を目標とします。これより早すぎると、作った耳が後でゆがんできたり、十分肋軟骨がとれず良い形の耳が作れなくなったりします。時期を選び、適切な治療のできる施設を選べば、現在では作ったとはわからないくらい精巧な耳を作れるようになっています。弘前大学病院形成外科では、世界でもトップクラスの治療を行うことで知られており、他県からも治療を受けに来る患者も多く、また他県や海外にも手術の指導を行っています。

Q : 小耳症では聞こえをよくする治療をしますか
 小耳症では耳の穴が無い、狭いなどにより、聞こえは反対側より悪い場合が少なくありません。しかし、聞こえをよくするのに効果の高い治療法はなく、現在は殆ど行われておりません。かえってその手術をすると、良い形の耳が作れなくなります。形成外科と耳鼻科医とで手術が必要かどうか綿密な打ち合わせが必要になりますので、必ず形成外科を受診して相談して下さい。

Q : 他の施設で小耳症の治療を受けましたが、あまり良い形でありません
 作り直すのはかなり難しい技術を要しますが、再手術によりもっと良い形にすることが可能な場合が少なくありませんので、相談にいらして下さい。

Q : 耳の穴が狭いのですが
 「外耳道狭窄」といいます。この場合、程度にもよりますが、手術で耳の穴を広げないと耳の掃除ができず、非常に困ってしまいます。まず形成外科を受診下さい。目立たない耳の裏の皮膚を利用して、耳の穴を大きくする治療が可能です。

Q : 耳のけがや腫瘍で変形したものも治せますか
 治せます。その程度や形により、様々な手術法がありますのでご相談下さい。

 

3. あざ


Q : 生後すぐ真っ赤に盛り上がったあざがでてきましたが治療はどうなりますか
 「いちご状血管腫」が考えられます。このあざは数年の経過で色が薄くなり目立たなくなることが期待できるので、一般に経過をみていきます。もし、出血を繰り返したり、色が残って目立つ場合には手術をすることもあります。

Q : あざはレーザーできれいになりますか
 レーザーの開発はすすんできていますが、あざの種類により効くもの、効かないものがあります。また、一般に盛り上がったあざには効果がありません。

Q : 顔に大きな黒あざがありますが治療はどうするのですか
 あざの種類にもよりますが、レーザーが効かないものには手術を行います。小さなものはそのまま切り取って縫います。大きなものは、周囲の皮膚を利用してゆがみが出ないように注意して治します。非常に大きなものには皮膚移植を行うこともあります。

Q : 生まれたときから頭の中にでこぼこしてはげたところがあります
 「脂腺母斑」というあざが考えられます。このあざは手術できちんと切り取ってしまわないと成人してから皮膚癌に変化することが多いことが知られています。気にしない、面倒くさいといわず、一度受診して相談してください。

Q : あざは自然に消えますか
 「いちご状血管腫」は、比較的目立たなくなることが多いのですが、他の殆どのあざは消えません。

Q : あざはどんどん大きくなりますか
 成長による体の大きさとともに大きくなるのはもちろんですが、そのほかに生まれたときは目立たず、生後数ヶ月のうちに広がってくる場合もあります。このほかで極端にぐんぐん大きくなることは通常ありません。

Q : あざのあったところが最近じくじくしてきました
 感染を起こしている場合、または皮膚癌に変化してきた可能性があります。早急に受診しましょう。

Q : 医師に血管腫といわれましたが、これはなんですか
 あざは一般的な呼び方ですが、医学的には赤あざは「血管腫」、青、黒あざは「母斑」とよばれることが多いです。

 

4. その他の先天異常


 形成外科では、比較的身体の外側の「形態」や「機能」にかかわる病気の治療を担当します。体表の目に付く変形は全て形成外科の治療分野です。よく受診する病気を以下に書きます。このほかにも非常にたくさんの病気がありますが、参考にして下さい。
脱毛症
先天性頭皮欠損(生まれつき頭の皮膚が一部、欠けている)
目、まぶた
先天性眼瞼欠損(まぶたの変形)
蒙古ひだ(目頭のしわ)
眼瞼下垂(まぶたがあきにくい状態)
皮様嚢腫(まぶたの生まれつきのできもの)
鼻、唇、口
唇裂、口蓋裂(唇や口の中が割れている)
唇裂外鼻、按鼻、斜鼻(鼻の変形)
巨口症(口が裂けている)、小口症
反対咬合(うけくち)、舌小帯短縮症(舌の動きが悪い)
分裂鼻
小耳症、無耳症(耳が小さい、ない)
折れ耳、埋没耳、立ち耳(耳の変形)
副耳(頬の小さいできもの)
第1第2鰓弓症候群(頬がこけている、耳がない)
外耳道狭窄、外耳道欠損(耳の穴が狭い、ない)
頚部正中嚢胞(首のできもの)
翼状頚(首のひだ)
からだ
漏斗胸(胸の真ん中がへこんでいる)
副乳(余分な乳首)
ポーランド症候群(乳房がごく小さい)
陥没乳頭(乳首がくびれ込んでいる)
へそ
臍欠損(へそがない)
臍肉芽腫(へそのできもの)
臍ヘルニア(でべそのようにとびでている)
性器
尿道下裂(おしっこの出口の位置異常)
膣欠損症
手、足
短指症(指が短い)
合指症(指がくっついている)
多指症(指が余分にある)
巨指症、巨足症、爪甲欠損症


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