必要性

課 題

全国的に見れば、がん専門医療従事者の養成数は目標を達成したものと考えられるが、その質はいまだ十分なものではない。すなわち、量から質への移行が必要と考えられる。

  • 3D内視鏡手術、ロボット手術、IMRT・定位照射、レーザー気管支鏡などの先端的治療技術の導入による低侵襲がん治療(低侵襲の外科治療、放射線治療、光力学的治療)を習得するためには単にがん専門医師というだけでなく、綿密な研修プログラムが必要である。
  • がん診療を全人的総合的に管理する専門家が不足しているため、それぞれの領域の専門性が十分に患者の診療に反映されていない。
  • がん地域連携についても、質向上のためにはツールである連携パスの策定、地域連携のコーディネート、医療資源の配置などが専門教育として必要である。
  • がん医療の質を評価すべき臨床研究の専門教育を受けた人材も不足しており、得られたエビデンスの実践応用についても十分な教育がなされてはいない。
  • 医療従事者のスキルアップが実現できたとしても、関連する医療機器の発展が伴わなければ、質の向上は期待できないが、がんに特化した医工連携が十分に機能しているとは言い難い。
  • 質の高いがん化学療法の実現には先進的な教育を受けたがん専門薬剤師の関与が不可欠である。
  • がん登録、がん地域医療連携、がんに関する医事の事務専門家が不足しており、がん診療現場での効率および質が担保されていない。

対応策

  • 先端的低侵襲がん治療については、早期肺癌に対する気管支鏡レーザー治療、胸腔・腹腔・後腹膜における鏡視下手術(特に3D内視鏡)、ロボット手術、IMRT、定位照射、小線源による低侵襲放射線治療についての専門家実践教育を東京医科歯科大学および東京医科大学で行う。
  • 臨床腫瘍学講座などを中心として総合臨床腫瘍医の養成を、東京医科歯科大学および東京医科大学で行う。
  • がん地域医療を発展させるために、地域がん医療のネットワーク化に関する包括的な教育を秋田大学および弘前大学で行う。
  • がん治療法の開発、比較検討、がん治療へのEBM実践を実現するために、臨床研究方法論、エビデンスに基づく診療実践についての教育を東京医科歯科大学で行う。
  • がんに関連する医工連携研究者養成のため、東京工業大学の大学院にがん医歯工学連携コースを開設し、理工系と医学系の連携および連携大学の附属病院で教育を行う。
  • がん専門薬剤師の養成のために、東京薬科大学の6年制薬学部に併設される博士課程に臨床薬学コースを設置し、専門薬剤師養成を連携大学の附属病院と共同で行う。
  • がん診療に特化した事務職員のインテンシブ教育を、東京医科歯科大学および弘前大学で行う。