分子輸送学講座 (共同研究講座)Department of Molecular Transport

【研究室構成および紹介】

  • 特任教授   山田 勝也
  • 招へい准教授 飯嶋 秀樹
  • 助教(併)   多田羅 洋太
  • 助教(併)   葛西 秋宅

【本講座の主要テーマ】

弘前大学が中心となり取得した国際特許技術「蛍光L-グルコース」*1 を発展させることにより、がんのPET検査*2などに現在利用されているD-グルコース(ブドウ糖の学名)を用いる方法を上回る「高精度がん診断法」の開発を進めます。さらに、L-グルコースを効果的に用いることで、従来法より副作用が小さく、がん細胞選択的な「治療薬」の開発を行います。特に膵臓がんや胆道がん、卵巣がんなど「難治性のがんや生命予後の悪いがん」をより早期に的確に捉え、治療法の改善に結びつけていくことを目標としています。

用語説明
*1)弘前大学が中心となり、JST3)、AMED4)そのほか多くの大学や企業、国公立試験研究機関の支援を受け開発・取得したL-グルコースを核とする一連の国際特許技術。L-グルコースは、D-グルコースを鏡に移した形をもち、天然にほとんどみられない。デンプンの基本単位で生物の重要なエネルギー源でもあるD-グルコースとは異なり、L-グルコースを哺乳動物細胞はエネルギーとして利用できないとされる。山田勝也研究室は、D-グルコースを蛍光で光らせ細胞の糖輸送を研究する過程で、陰性対照としてL-グルコースを蛍光で光らせたところ、がん細胞が細胞内にこれを取り込み、がんが蛍光を発することを偶然見出した。L-グルコースは正常細胞への取り込みが小さいことから、D-グルコースを多量に取り込むがん細胞の性質を利用してがんを可視化する現在一般的な方法に比べ、よりコントラストよくがんを可視化できる可能性があり、医療分野への応用を10年余り進めてきた。原理を解明するための学術的な国際連携体制がとられている。詳細はhttps://www.med.hirosaki-u.ac.jp/~transport/jp/index.html

*2)PET検査:PETはpositron emission tomographyポジトロン(陽電子)放出断層撮影の略。がん細胞がD-グルコースを好んで細胞内に取り込む性質を利用する。D-グルコースを放射性フッ素で標識したFDGなどを静脈注射し、一度の撮影でほぼ全身のがんを可視化できる生理学的検査。専らD-グルコースをエネルギー源として利用する脳の活動を調べる目的で学術応用が進んだが、脳と同様にD-グルコースを多量に取り込むがんの検出にも広く用いられるようになった。数mm以下の小さながんや早期がんを検出できない点や、がんではない炎症や良性腫瘍などが偽陽性となることがある点などが短所とされる。

*3)国立研究開発法人科学技術振興機構(JST):科学技術振興を目的として設立された文部科学省所管の国立研究開発法人。国の科学技術基本計画の中核的な役割を担う機関の一つ。山田を代表者として2008年よりJST育成研究(3年総額7800万円、事後評価で最高評価を受け、JST地域事業15年史における14の成果事例に選定された)、2011年よりJST(のちAMED) 産学共創基礎基盤研究プログラム(5年総額1億7950万円、中間評価、事後評価共に評価Sを受けた)などに採択される。

*4)国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED):医療分野の研究開発を総合的に推進し、医薬品・医療機器の貿易赤字の拡大を防ぐため、文科省、厚労省、経産省の関連分野が集まり設立された。特にヒトを対象とする実用化研究に重きを置く。