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RESEARCH
細菌やウイルスは、感染症を引き起こすだけではなく、自己免疫疾患や原因不明疾患においても間接的なトリガーとして深く関わっていると考えられます。細菌学講座は、感染に対する生体防御応答をサイトカインという免疫細胞から分泌されるメディエーターの観点から研究を進め、生体内サイトカインの修飾による予防・治療を目指しています。細菌やウイルスは、感染症を引き起こすだけではなく、自己免疫疾患や原因不明疾患においても間接的なトリガーとして深く関わっていると考えられます。細菌学講座は、感染に対する生体防御応答をサイトカインという免疫細胞から分泌されるメディエーターの観点から研究を進め、生体内サイトカインの修飾による予防・治療を目指しています。 一方、免疫システムは、ホメオスタシスの維持に重要な働きをしています。その維持には免疫系だけではなく、神経系・内分泌系とのネットワークが関与していることが知られています。このネットワークのクロストークには‘サイトカイン’が中心的な役割を果たし、サイトカインバランスの不均衡が各種疾患を引き起こすと考えられます。そこで、サイトカインを中心に置き、免疫システムをホメオスタシス・ネットワークの立場から捉え、基礎的研究を行っています。 同様な考え方から、炎症性疾患等の予防・治療への応用を進めています。
リステリアは結核菌と同様に細胞内寄生性細菌で、ヒトでは日和見感染により髄膜脳炎・敗血症を引き起します。リステリア感染に対して宿主は典型的なTh1タイプの免疫応答が誘導され、細胞性免疫解析の格好なモデルとして汎用されています。私たちは、リステリア感染モデルを利用して、経口・経鼻感染等感染ルートや感作樹状細胞ワクチン・DNAワクチンによる、より効率の良い適応免疫の確立を目指しています。一方、サイトカインや共刺激分子などのノックアウトマウスを用いて、リステリア感染防御機序の解析を行っています。
生体防御は免疫系が担っています。しかし、ホメオスタシスというグローバルな視点で考えると、免疫系は神経系・内分泌系とネットワークを形成しています。生体防御機序を解明するためには、それらのクロストークを知る必要があります。私たちは、交感神経系を不可逆的に遮断したマウスでは、リステリア感染に対する抵抗性が増強することを明らかにし、リステリア感染防御が交感神経系の支配下にあることを見出しました。また、下垂体から産生されるサイトカインであるmigration inhibitory factor (MIF) がリステリア感染死の一因となっていることを明らかにしました。現在さらに、副交感神経系やcorticotropin-releasing hormone (CRH) の関与を究明しています。
黄色ブドウ球菌はMRSAとして病院感染の主たる原因菌として重要です。また、黄色ブドウ球菌が産生するstaphylococcal enterotoxin (SE)、toxic shock syndrome toxin-1 (TSST-1) がsuperantigen活性を有し、種々の免疫学的修飾が行われています。私たちは、黄色ブドウ球菌感染による感染防御がIFN-γの正と負の微妙な作用のバランスのもとに行われることを明らかにしてきました。一方、MRSAに対するワクチンが待望されるところです。私たちは、SECやTSST-1の無毒変異体がMRSA感染マウスモデルでワクチンとして有効であることを明らかにし、現在DNAワクチン化を進めています。また、SEAの催吐活性とsuperantigen活性の関連性を究明しています。さらに、アトピー性皮膚炎と黄色ブドウ球菌感染との関連性も指摘されており、相互の関連性について研究しています。
サルモネラは感染宿主内で持続感染を惹起することが特徴です。持続感染は宿主と病原体とのバランスによるもので、宿主の免疫能低下により再燃が起こります。私たちは、ネズミチフス菌のストレスタンパクや鞭毛関連遺伝子をノックアウトした変異株を用い、その持続感染機序を炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインのバランスの視点から究明しています。なお、本研究は千葉大学大学院薬学研究院微生物薬品化学研究室・山本友子教授との共同研究です。
クローン病・潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患は難治性を示し、その発症機序の解明や治療法の確立が急がれています。私たちは、dextran sulfate投与マウス、IL-10ノックアウトマウス、OX40Lトランスジェニックマウスといった炎症性腸疾患マウスモデルを用い、IFN-γとTGF-β間のバランスの破綻が粘膜障害に重要であることを明らかにしました。この視点から、炎症性腸疾患に対する新しい治療戦略の追求を行っています。
糖尿病患者の易感染性は、さまざまな要因が絡んでいますが、その基本にあるのは免疫システムのレベルの低下あるいは障害であると考えられます。私たちは、糖尿病モデルとしてⅠ型糖尿病モデルマウス(Streptozotocin投与マウス)とⅡ型糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)を用い、易感染性機序について解析を行っています。また、db/dbマウスはレプチンレセプターの欠損マウスであることから、細菌感染防御におけるレプチンの関与についても並行して究明しています。
アレルギーを起こすヒトは、あるアレルゲンに対しアレルギー反応を起こすと、他のアレルゲンに対しても容易に反応しやすくなりますが、そのメカニズムは知られていません。私たちは、卵白アレルギー・ハプテンおよびウルシ接触性皮膚炎モデルを作製し、アレルギー反応間の相互作用を解析し、アレルギーマーチの誘導メカニズムを明らかにする研究を行っています。