HOME

教室紹介

スタッフ紹介

教室沿革

診療

診療案内

研究

研究業績

科研費

受賞歴

大学院生

教育(医学生・研修医へ)

研究室研修

クリニカルクラークシップI

クリニカルクラークシップII

大学院紹介

関連病院

教室ブログ

研修室研究の成果

腹部 dynamic CT における腹腔動脈・上腸間膜動脈の解剖学的分岐様式と変異の検討

弘前大学医学部医学科藤川 淳一、金谷 美央子
弘前大学医学部放射線科学教室澁谷 剛一、小野 修一

背 景 1

  • 多列化検出器型CTへの進歩
    • 体軸方向の検出器の増設
    • 時間・空間分解能の向上
    • 撮影範囲拡大
    • 現在4~64列CTが普及
      • 128列、256列、320列型も臨床応用開始

背 景 2

  • CT angiographyのメリット 非侵襲的
  • 血管撮影と比較して
    • 時間短縮(外来)
    • 医療コスト
    • In vivo(生体内)
  • 現在、治療戦略を立てる上で必須である

目 的

多時相造影法で得られた再構成薄層スライスCT画像を用い、

ボリュームレンダリング(Volume Rendering:VR)、
最大値投影法(Maximum Intensity Projection:MIP)

を作成し、腹腔動脈・上腸間膜動脈の解剖学的分岐様式および変異を検討したので報告する。

対象と方法(1)

  • 対象症例:
    2008年4月~2009年10月に当院にて多時相造影が施行された341症例
    • 男:女=205:136
    • 平均年齢64歳(12~86歳)
      多時相造影の目的:
      • 悪性腫瘍精査(治療前全身検索)、術後、化学療法後経過観察
      • 良性疾患(慢性膵炎、FNH(限局性結節性過形成)など)の経過観察

対象と方法(2)

  • 使用撮影装置:
    シーメンス製 SOMATOM Definition 64列CT
    GE製 Light Speed Qxi 4列CT
  • 撮影方法:
    • 多時相 3相、4相造影*
      * 3相:動脈相、門脈相、平衡相
      4相:動脈早期、後期、門脈、平衡相
  • 使用造影剤:中~高濃度ヨード造影剤
    • イオパミロン370
    • オムニパーク300
    • イオメロン 350 体格、腎機能により選択
  • 注入量:体重×2倍* (最大150ml) *中濃度ヨード造影剤の場合
  • 注入速度:3~5ml/sec

対象と方法(3)

  • 画像再構成:
    • 動脈相画像より作成(300スライス前後)
      • 1mm厚、0.5mm間隔(64列)
      • 2.5mm厚、1.25mm間隔(4列)
  • 使用画像ワークステーション:
    • Synapse Vincent(富士フィルムメディカル製)
    • 使用ソフトウェア:ボリュームアナライザー
  • 評価方法:
    • 研究室研修生が以下を画像ワークステーションにて作成、評価
      • VR(Volume Rendering)、
      • MIP( Maximum Intensity Projection )
    • その後 放射線科画像診断専門医も加わり確認

今回用いた分類

  • 平松分類: 腹腔動脈、上腸間膜動脈における解剖学的変異の分類
    (参考文献2 平松京一監修:腹部血管のX線解剖図譜)
  • 基本factor:
    • 総肝動脈
    • 脾動脈
    • 上腸間膜動脈
    • 上記3枝+左胃動脈分岐(別分岐か否か)

Type Ⅰ:celiac type(complete type)
Type Ⅱ:hepatomesenteric type
Type Ⅲ:splenomesenteric type
Type Ⅳ:celiacomesenteric type Type Ⅴ:separate type

Type1A型 腹腔動脈の分岐の1例

クイノー分類と肝動脈区域枝

結果_自験例と過去の文献の比較

分岐Type 自験例 Adachi分類 Adachi 加藤 正村ら Michels Lunderquist 平松ら
CT 剖検 剖検 剖検 剖検 血管造影 血管造影
1A 304例(89.15%) 87.80% 91.60% 90.60% 89% 85.30% 86.3%
1B 19例(5.57%) 6.40% 3.00% 2.80% 3.50% 9.30% 8.9%
2A 8例(2.35%) 0.40% 0.40% 1.80% 2~5% 2~5% 2.80%
2B 0%
3A 0% 2例のみ
3B 0%
4A 6例(1.76%) 2.40% 1.40% 1.30% 見られず 見られず 1.20%
4B 1例(0.29%) 1.20% 0.70% 0.40% 見られず 見られず
5A 0% 1例
5B 0%
5C 1例(0.29%)
症例呈示
0.2%

左肝動脈欠如(肝左葉切除)
4例
右肝動脈欠如(術後) 3例
左胃動脈欠如(術後) 5例
胃十二指腸動脈欠如(術後) 1例

腹腔動脈分岐型のAdachi分類(6型28群)と平松分類の5型

症例呈示 Type 5C

副肝動脈の破格(22%)

副肝動脈の検討:宮木分類
肝臓に分布する動脈(固有肝動脈と副肝動脈の起始

宮木分類による 自験例の副肝動脈の起始パターンの検討

腹腔動脈分岐型のAdachi分類(6型28群)と平松分類の5型

MSD型
0例
0%
MS型
1例
0.29%
MD型
1例
0.29%
SD型
5例
1.47%
M型
14例
4.11%
S型
31例
9.09%
D例
18例
5.28%

(参考:宮木ら M型>MS型>MD型>MSD型)

宮木の分類に無い4パターン(6症例)

1.右肝動脈が腹腔動脈から独立分岐 2例
2.胃十二指腸動脈から置換右肝動脈分岐 2例
3.左副肝動脈(A2、A3)が左胃動脈起源、
  脾動脈から置換右肝動脈が分岐
1例
4.胃十二指腸動脈からA2、A4に分岐 1例
症例呈示1

宮木分類にない分岐パターン 右肝動脈が腹腔動脈から独立分岐

症例呈示2

宮木分類にない分岐パターン 左副肝動脈(A2,A3)が左胃動脈から分岐、
脾動脈から右副肝動脈が分岐

副肝動脈以外の破格

1.GDA、RHA、LHA同時分岐
6.2%(21例)
2.LHAの早期分岐
2.3%(8例)
3.RHAの早期分岐
0.6%(2例)

まとめ1

  • 腹腔動脈の分岐においてはType1A(89%)Type1B(5.8%)Type2A(2.3%)Type4A(1.8%)Type4B(0.29%)でType5C(0.29%)以外は過去の報告と同様であった。
  • 自験例では過去の分類では非常に稀なType5Cを1例経験した。
  • 自験例の副肝動脈の発現頻度は全体で22%で、内訳は、右副肝動脈6.5%、左副肝動脈13%、左右両方2.1%であった。
  • 宮木分類のS型、D型が多い特徴があり、それぞれS型9.09%、D型5.28%で、宮木の報告と異なりM型は4.11%と少なかった。また、宮木の分類にはない4パターン6症例も経験した。

まとめ2

  • 文献的には、足立や宮木の分類には当てはまらない変異の報告も稀ではなく、自験例を考慮すると、実際にはさらに多くのバリエーションが存在する可能性が示唆される。
  • 過去の報告例は剖検例、血管撮影症例が対象であり、自験例はCT症例(in vivo)であり、侵襲度も少なく、より生理的な状態である。よって異なる結果になったと考えられる。
  • 多列検出器型CTを用いた多時相撮影は、in vivoで簡便かつより非侵襲的に分岐様式、変異が判り、有用である。

参考文献:

  1. 秋田恵一ら:画像診断とIVRのための腹部血管解剖,日獨医報(51)2,208-308,2006
  2. 平松京一ら:腹部血管のX線解剖図譜、1982、医学書院
  3. 宇山茂樹ら:腹部CT検査と読影のポイント、1987、メディカル葵出版
  4. 村田喜代史ら:胸部のCT第2版、2006、MEDSI

このページのトップへ戻る