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教授からのメッセージ

 私たちの研究室では、酸化ストレスに対する防御機構を詳細に知り、それを活用することで、神経変性疾患や動脈硬化症などの酸化ストレス関連疾患に対する疾患修飾薬や予防薬の開発を目指して研究をしています。
 酸素は好気性生物がエネルギーを産生するのに必須であり、主にミトコンドリアによって消費されます。酸化ストレスをおこす活性酸素は酸素が還元されて産生されます。活性酸素は長年酸素利用の有害副産物として考えられてきましたが、近年、種々の生命現象を制御しているものと考えられています。ホメオスターシスが正常に働いて活性酸素が低レベルで抑えられていれば問題はないのですが、この制御が加齢などの原因で異常をきたすと生体の酸化が進行し、加齢性疾患の原因となると考えられます。
 活性酸素の大量発生は生命現象にあまりにも重要な役割を果たすために、それを低く保つホメオスターシスの分子機構はあまりにも巧妙です。これは、数十億年という長い年月を経て獲得されてきた分子機構で、その分子の存在意味を知るためには時には進化生物学的な考えが必須です。酸化ストレスを正確に理解するには、私たちが酸素の毒性と戦ってきた数十億年の歴史を理解する必要があると思っています。
 遠くにある目標に向い、今できることをすることが必要だと思っています。是非、一緒に目標に挑んでいただける若き研究者の参加をお待ちしております。

    参考文献
  1. Oxygen: The Molecule that Made the World. Nick Lane
  2. Power, Sex, Suicide: Mitochondria and the Meaning of Life. Nick Lane
  3. Discovery of the negative regulator of Nrf2, Keap1: a historical overview. Itoh K, Mimura J, Yamamoto M. Antioxid Redox Signal. 13, 1665-1678, 2010.
経歴
平成5年
長崎大学医学部卒業
平成9年
東北大学大学院医学研究科卒業
平成9年
日本学術振興会 特別研究員
平成12年
筑波大学基礎医学系 講師
平成14年
ERATO山本環境応答プロジェクトグループリーダー
平成18年
弘前大学医学部高度先進医学研究センター 教授
受賞歴
平成16年
トムソンリサーチフロント賞(山本雅之先生との共同受賞)
平成16年
日本生化学会奨励賞
平成17年
文部科学大臣表彰若手科学者賞