2016年にWHO脳腫瘍分類第4版が改定され、これまでの病理組織学所見に加えて、IDH、ATRX、TERT、BRAF-V600E、1p19qLOH、MGMTなどの多数の遺伝子解析が必須となり、病理所見と併せての統合診断が要求されています。これらの情報は診断のみならず、治療反応性や生命予後を予測するうえでも重要な因子となっています。MGMTは現時点では治療効果と予後予測因子とされていますが、現在これら検査には保険適応がなく院内で独自に解析している現状です。
悪性脳腫瘍に対する標準化学療法は、腫瘍組織型により画一的な抗がん剤の組み合わせで施行されています(放射線(RT)+TMZ)。しかし抗がん剤に対する感受性は、個々の腫瘍によって異なり、また同一患者においても初発と再発の腫瘍において違いがみられます。現在の悪性脳腫瘍の標準治療薬であるTMZを含むアルキル化剤への感受性は薬剤耐性遺伝子であるMGMTの発現に依存しており、予後予測因子でもあります。
本治療においては、手術中に遺伝子診断用に摘出した組織からMGMTを解析し、これをもとにRT+TMZを中心とした治療とするか、それ以外の抗がん剤を組み合わせた治療とするか、もしくは医師主導臨床試験などの選択がよいか等を考慮します(附図)。
厚生労働省の定める先進医療Aに指定された本技術により、脳腫瘍の化学療法においてテーラーメイド化した効率的治療が可能となります。
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