教授からのメッセージ

教授からのメッセージ 学生・研修医の皆さんこんにちは!腫瘍内科学講座教授の佐藤 温です。名前は「あつし」と読みます。2012年に2代目教授となりすでに5年が過ぎました。今年は、いよいよ仲間が増えて活動を広げて行こうというまさに出発の年になりそうです。これから何が始まるのかについては後半でお話しするとして、まずは自己紹介から。
生まれは、東京文京区の下町で高校までは千葉と東京で過ごし、大学は沖縄県にある琉球大学で医学の勉強に励みました。6年間は沖縄独特の文化の中で充実した学生時代を送ることができました。この時に学んだことのひとつに、「命どぅ宝」があります。「ぬぅちどぅたから」と読みます。命こそ宝、生命は何よりも尊く大事なものであり、命を粗末にしてはいけないという意味です。医師になって常々思うことは、医療の基本がこの「いのち」であるということです。実はこの「いのち」についてここ青森の地で、みんなと考えて行きたいというのが私の一番の思いです。その後、東京にもどり、昭和大学で大学院を修了し、20年以上同大学及びその関連施設で臨床及び臨床研究をしていました。ここでも、人生の在り方をいろいろと教えてもらいました。私たちは医師免許証をもらったからといって、一人前の医師というわけではありません。そこからがスタートであり、そこからどのような医師になるかが決まってくるのです。日々厳しい研鑽の連続でしたが、それらの日々が今の自分をしっかりと支えてくれています。研修医時代の苦労は必ず利息がついてその後の自分に帰ってきます。途中、2年間は福島県郡山市にある坪井病院に出向していました。がん患者中心の病院でまだまだ青臭い私を受け入れて育ててくれたことを感謝しています。当時最も北にあるホスピス病棟がありました。診断から看取りまでの医療を豊富に経験しました。大学に戻り、本院へ異動になってからは教育にもちからを入れることになりました。そうやって今の自分が徐々に形成されていきました。ですので、私はいまだに、そして今後も臨床家であり続けます。どうしてそう考えるかって言えば、未熟な自分の診療を受けて、さらには感謝までしてくれた多くの患者さんへのせめてもの恩返しと思っているからです。
治る見込みのないがん患者さんらを診る時、つらくなりませんか?という質問をうけることがあります。答えは、つらいことは多々あります、です。でも、それ以上のやりがいを感じます。若いころは、仕事やいろいろな事で悩むといつも病室の患者さんのところへ逃げ込んでいました。医師と患者の関係は、一方通行ではありません。医師が医療を提供していると、患者は自身のものがたりを私たちに与えてくれます。本当にいろいろなことを教えてくれます。人生の生き方から、医療の意義までも。限られた時間を意識した患者さんの多くは、本当に尊い方々です。障害を抱えた方々が尊い存在であることと似ているのかもしれません。がんを抱えた患者さんに対して、私たちはより良い治療を科学的に開発していく機会があります。臨床研究、臨床試験といったものです。その一方で、医療の限界に向かい合って、その患者さんに何ができるかという医の本質を経験していくことができます。結核が不治の病であった時に、そこに立ち向かっていった先人の医療者と同じです。こんなダイナミックな医療に是非、興味をもっていただけたらと思います。
教室員らは本当に一生懸命にがんばってくれています。抗がん薬という専門的な狭い領域の医療しかしていないとお考えでしたら大きな間違いです。がんを抱えた患者さんはいろいろな合併症を発症しますから、正直全身管理ができなければどうにもなりません。さらに、専門的抗がん薬治療と同時に緩和ケアを行っていくわけですから、本当に何でもこなさなければなりません。確かに、忙しいところではありますが、自身をより大きく育てたいならとても良い環境だと思います。そして、今、医師以外のメディカルスタッフたちとも連携をとって社会と医療の在り方について活動を展開しております。どうですか、みなさん仲間になりませんか?青森県をがん医療で一番にしてみませんか?それは、単に平均寿命のはなしではありません。みんなが幸せになるためへの挑戦です!

2017年8月20日 佐藤 温