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研究内容

鉄を介した酸化ストレスの産生と変性疾患

鉄はヘムに含まれる他、様々な蛋白質の補因子として働くことから、様々な生体反応に必須の物質ですが、2価のフリーの鉄は過酸化水素と反応してより有毒なヒドロキシラジカルを生じ(フェントン反応)、DNA障害、脂質酸化、アポトーシスなどを引き起こします。このため、細胞内フリーの鉄の調節は、細胞の生存にとって重要です。

Fe2++H2O2 → Fe3++HO-+HO・ (フェントン反応)
ヒドロキシラジカル

鉄の神経細胞への異常な蓄積はアルツハイマーやパーキンソン病などの神経変性疾患を引き起こすことが知られています。また、フリーの鉄は免疫細胞を分化・増殖させ、慢性炎症を増悪することが知られています。さらには、慢性炎症性疾患における鉄不応性貧血では、肝細胞やマクロファージ内に鉄が閉じこめられ、骨髄造血に供給されなくなった状態にあると考えられています。このようなことから、鉄の制御機構を理解することは、神経変性症や慢性炎症に対する治療戦略を構築する上で極めて重要と考えられます。

細胞における鉄の制御システムは、TfRやDMT1により細胞内に取り込まれ、ferritinに貯蔵またはFPN1により細胞外へ排出されます。そこで、私たちはこれらの細胞内での鉄代謝の調節機構を解析することによって、酸化ストレスによる細胞障害など、鉄代謝異常による疾患への応用が可能ではないかと考え研究を行っています。