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研究内容

スカベンジャー受容体CD36の遺伝子発現制御におけるNrf2の役割

Nrf2は酸化ストレス防御遺伝子群を統一的に制御する転写因子ですが、この因子を人為的に遺伝子欠損させたマウスの解析から、酸化ム抗酸化に関与するさまざまな分子の発現を調節していることが分かってきました。
酸化型低分子リポタンパク質(oxLDL)は、 血管の内皮細胞を障害して動脈硬化を促進したり、血栓を作りやすい体質にします。このoxLDLはマクロファージ表面のスカベンジャー受容体によって認識され、貪食されます。私たちは、oxLDLのマクロファージへの取り込みと動脈硬化症の形成・病原性に関わるスカベンジャー受容体CD36の遺伝子発現が、Nrf2によって制御されることを明らかにしました。つまりジエチルマレイン酸、スルフォラファン、15-deoxy-prostaglandin J2など様々なNrf2活性化剤によって、CD36の発現は増強します。

これまで、CD36は転写因子PPARgによって発現を制御されることが詳細に解析されてきましたが、Nrf2による制御は新しい知見です。
しかしながらNrf2がどのようにCD36遺伝子の発現を活性化するのか、その活性化にどのような意義があるのかについてはまだ明らかになっていません。
CD36には2つの第一エクソン(1a, 1b)がありますが(最近3つめの第一エクソンが報告されました)、エクソン1aがNrf2活性化剤に応答して発現が増強することがわかりました。CD36のシスエレメント(遺伝子発現にかかわるDNAの塩基配列)を解析したところ、2つの抗酸化剤応答配列(ARE)(近位-, 遠位-ARE)を見いだしました。そのプロモーター解析により、近位-AREがNrf2活性化剤応答に必要であり、そのARE特異的にNrf2が結合することがわかりました。
現在は、ほかのスカベンジャー受容体の発現に対するNrf2影響を調べています。

またCD36は黄色ブドウ球菌などの病原細菌のマクロファージによる貪食に重要であること、CD36の変異により感染性異物の認識に必須なToll-like 受容体2の活性が低下し、TNF-aの産生が低下することが報告されています。
さらにNrf2は、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)など抗炎症性遺伝子の発現を増強します。またNrf2遺伝子を破壊したマウスの解析から、自己免疫性疾患に関与することが明らかになっています。
これらのことから、Nrf2が自然免疫による感染防御に関わっているとの仮説をたてて、Nrf2遺伝子破壊マウスやそのマクロファージ成分の細菌感染感受性について検討しています。