研究テーマ
1.精子に由来する遺伝的異常
A.精子頭部形態との関連性
射精される精液中の精子は扁平な頭に細長いしっぽがついた形をしています。 けれども、頭の形は正常とされる写真aに加えて写真b〜eのような様々なものが含まれています。 このうち大きな頭の精子(写真c)では余分なDNAが含まれる場合があること、 細長い精子(写真e)ではDNAが切断されている割合が高いことが私たちの研究で確認されました。 この研究により平成17年度日本不妊学会(現日本生殖医学会)学術奨励賞を受賞しました)
Watanabe S. (2004) Chromosome analysis of human spermatozoa with morphologically abnormal heads by injection into mouse oocytes. Reprod Med Biol 3:147–152.
最近、精子表面の小さな凹みが流産の原因になる可能性が報告されていましたが、 私たちの研究グループが凹精子のDNAをスクリーニングしたところこれを否定する結果が示されました。
Watanabe S et al. (2011) An investigation of the potential effect of vacuoles in human sperm on DNA damage using a chromosome assay and the TUNEL assay. Hum Reprod 26:978-986.
B.運動性との関連性
射精された精子の中には運動精子に混じって運動能力のない不動性精子が含まれています。 不動性精子は高い割合でDNAが切断されていることが私たちの研究で確認されました。 運動精子が全くない重度の男性不妊に対する顕微授精の適用にはあらかじめ精子の遺伝的検査を行うことが重要です。
Watanabe S. (2004) Frequent structural chromosome aberrations in immotile human sperm exposed to culture media. Hum Reprod 19:940–947.
2.卵子に由来する遺伝的異常
卵子のDNAは23個のX字型をした染色体という固まりを作っています。 しかし、写真の卵子のようにいくつかの染色体がI字型に分離している場合があります。 この卵子が受精するとI字型の染色体が成長の過程で失われて流産に至る場合があり、この危険性は母体の年齢が高まるほど大きくなることが知られています。 私たち研究グループはクローンの技術を応用することで流産のリスクを下げる方法を開発しました。
Tanaka et al. (2009) Metaphase II karyoplast transfer from human in-vitro matured oocytes to enucleated mature oocytes. Reprod Biomed Online 19:514–520.
3.受精後に生じる遺伝的異常
受精卵のDNAは父親と母親から受け継がれた23個ずつ合計46個の染色体から成り立っています。 受精卵はヒトの体に必要な数の細胞を分裂によって作り出しますが、 それぞれの細胞が分裂する際にはDNAもコピーされて新たにできた二つの細胞に均等に配分されます。 しかし、ときにDNAコピーが均等に分けられず新たにできた二つの細胞の染色体の数が違ってしまうというエラーがおこります。 これは着床前におこり易く妊娠に至らないケースが大部分です。
4.卵子の老化と若返り技術
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