ご挨拶



腫瘍センター長
佐藤 温

キャンサーボード(Cancer Board)とは、がん患者さんそれぞれの状態に応じて、最も適切な治療を提供することを目的として医療機関内で開催される症例検討会のことです。単一科の医師だけではなく、がん医療に携わる専門職が職種を越えて一堂に集まり、個々のがん患者さんの症状や状態さらには患者さんの気持ちを共有して、専門的意見を出し合い、治療方針を検討するので、その患者さんにとっての最良の医療が提供できるようになるのです。
「がん診療連携拠点病院の整備について」(平成26年1月10日付け健発第0110第7号厚生労働省健康局長通知)において、がん診療連携拠点病院の指定要件として、キャンサーボードの設置及び定期的開催(月1回以上)が位置づけられています。地域がん診療連携拠点病院指定である当院でも、キャンサーボード立ち上げに向けてがん診療委員会の中にワーキンググループが作られて、がんに関わる全ての診療科に協力いただき平成27年3月から本格的に開始に至りました。できるだけ多くの患者さんにメリットをだせるように、かつ現場の医療者にも煩雑にならないように、開催は毎週2回(月、木曜日)と頻回にし、申し込みも電子カルテで診療のその場で行えるように簡便にしました。
参加者は放射線科(診断および治療)医師と腫瘍内科医師は全日程で参加し、さらに患者さんの治療方針に関わる診療科すべて参加できるように症例ごとに細かく時間が設定されます。必要に応じて緩和ケアチームや医師以外のメディカルスタッフにも検討に加わってもらっております。もちろん、医療者や研修している学生であれば参加するのは誰でも自由であり、それぞれの教育の場にもなっております。基本形式は山形大学方式で、開始当初は治療方針のみを取り扱うことになっておりましたが、最近は診断に困った症例も持ち込まれるため、病理医の先生方にもご協力頂いております。
開始から2年以上が経ちましたが、立ち上げから関わっている身として感じていることがあります。がん医療を支えているすべての診療科やメディカルスタッフがひとりの患者さんのことを一堂に会してみんなで悩み考えることで、医療者同志のつながりがかなり良い雰囲気でかつ強固になったように感じます。
キャンサーボードがうまく運営されることは、病院全体でより良いがん診療を目指すために必要不可欠なことです。もちろん、円滑な運営の陰には事務職の活躍があり、彼女らなくては全くできません。そういったシステム全体をこの青森県全体にも広げていきたいと思っております。
視察も受け入れております。これまでに脳神経疾患研究所附属総合南東北病院やつがる総合病院の方々の視察希望がありました。
また、患者さんご自身の参加はできません。でもその結果を主治医から聞くことができます。
是非患者さんもキャンサーボードという言葉を知って下さい。