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 呼吸器外科臨床業績

 
我々はこのような疾患に対し診療を行っています。


   腫瘍性肺疾患:原発性肺癌 転移性肺腫瘍 良性肺腫瘍

   縦隔腫瘍、重症筋無力症

   気腫性肺疾患:気胸、巨大気腫性肺嚢胞(giant bulla)

   胸膜疾患(悪性胸膜中皮腫、胸膜腫瘍)

    漏斗胸

   膿胸

   胸部外傷   

 

はじめに
肺癌の増加や診断法の発展にともない、呼吸器疾患の症例数はますます増加傾向にあり、呼吸器内科、放射線科との密接なタイアップの元に着実な成果をあげてきている。研究では、分子生物学的手法を用いた癌転移関連分子の解析、周術期免疫パラメーターによる肺癌予後因子の検討、胸腔鏡下手術の適応拡大、人工材料を用いての胸壁再建、肺切除後右室機能の検討などが主なものであり、臨床での治療に直結したテーマが中心となっている。


2006年呼吸器外科手術集計
 2006.1.1〜2006.12.31
  総手術数 103  
   ・原発性肺腫瘍
     原発性肺癌 54
     その他 1
   ・膿胸に対する手術 3
   ・漏斗胸手術 1
   ・嚢胞性肺疾患(自然気胸を含む)11
   ・肺炎症性疾患 7
   ・良性肺腫瘍  2
   ・転移性肺腫瘍 5
   ・気管外傷  1
   ・胸壁疾患  3
   ・縦隔腫瘍 14
   ・気管支形成術 1

2005年臨床統計

 

]VATS肺葉切除術症例の内訳

縦隔腫瘍の頻度

 

1. 手術症例の概要


 平成7年(1995年)から平成12年(2000年)までの6年間における呼吸器疾患手術症例数は総計511例であった。疾患の内訳は、原発性肺癌262例、転移性肺腫瘍40例、良性肺腫瘍34例、自然気胸など嚢胞性肺疾患56例、肺結核など感染性肺疾患18例、縦隔腫瘍72例(重症筋無力症19例を含む)、胸壁・胸膜疾患17例、気管疾患4例、その他8例であった。

1995年〜2000年までの胸部・呼吸器疾患
疾患 症例数
原発性肺癌 262
転移性肺腫瘍 40
良性肺腫瘍 34
縦隔腫瘍 72
嚢胞性肺疾患 56
感染性疾患 18
胸壁・胸膜疾患 17
その他の呼吸器疾患 12

2. 主な疾患別の概要
1)肺 癌
 6年間での手術総数は262例で増加傾向にあり、平成11年(1999年)〜平成13年(2001年)は年間50例以上となっている。組織型の内訳は、腺癌が134例で最も多く、次いで扁平上皮癌が104例で、この2つで肺癌全体の90.8%を占める。以下、大細胞癌8例、腺扁平上皮癌8例、小細胞癌2例、カルチノイド2例、その他4例であった。
 施行した術式は、肺全摘術26例、肺葉切除術198例、区域切除術8例、部分切除術19例、その他11例であり、肺葉切除術のうち気管支形成を行うスリーブ肺葉切除術を10例に施行した。また、平成11年(1999年)よりcT1N0M0症例を適応として胸腔鏡補助下でのVATS lobectomyを開始し、17例に適用した。末梢型小型肺癌の増加に伴い今後さらに増えていくものと考えられる。
 これらの症例を含む平成3年(1991年)から平成12年(2000年)までの10年間における肺癌切除例373例のKaplan-Meier法による病理病期別での術後5年生存率は、0期100%(4例)、IA期74.6%(112例)、IB期61.2%(96例)、IIA期53.8%(14例)、IIB期64.0%(33例)、IIIA期49.1%(72例)、IIIB期22.4%(31例)、IV期は4年経過例がなく3年生存率18.2%(11例)となっている。肺癌は切除後の再発が多い難治癌であるが、外来での綿密なフォローのもと、転移巣の積極的切除や化学放射線療法によって再発後長期生存例も少なからず得ている。

2)転移性肺腫瘍
 各種悪性腫瘍の肺転移に対する肺切除術も積極的に行っている。6年間における転移性肺腫瘍切除症例は、癌腫25例、肉腫15例の計40例であった。
 術式は部分切除術を原則とし、両側多発転移例に対しては胸骨正中切開による同時切除を選択している。平成6年(1994年)からは胸腔鏡下切除術を導入し、それまでの検討での予後良好因子である転移個数5個以下のものに対して適用している。教室における転移性肺腫瘍切除例は74例(癌腫33例、肉腫41例)で、再発に対する複数回切除も含めてのべ95回の切除術が行われた。肺転移切除後の5年生存率は、癌腫が38.4%、肉腫が36.7%で差を認めていない。切除成績に関わる因子としては、一側肺転移例、転移個数5個以下、Disease-free interval 2年未満のものが有意に予後良好となっている。また、胸腔鏡下切除術は腫瘤が触知できないことから適応の決定に注意を要するが、胸腔鏡下切除例19例の5年生存率は68.3%で、同時期の開胸切除例21例の5年生存率23.3%に対して良好である。

3)縦隔腫瘍
 縦隔腫瘍(重症筋無力症を含む)は6年間で72例に対して切除術を行った。内訳は、胸腺腫26例、胸腺癌5例、胚細胞性腫瘍2例、神経性腫瘍3例、先天性嚢腫7例、その他3例、重症筋無力症(MG)に対する胸腺摘除術が19例でうち8例に胸腺腫が合併していた。MGを含めた胸腺関連腫瘍は計52例で全体の71.2%を占める。
 これらの胸腺関連腫瘍に対する切除術式の方針としては、胸骨正中切開による腫瘍を含めての拡大胸腺摘除術を基本術式としており、心膜、肺、腕頭静脈、上大静脈など隣接浸潤臓器の合併切除による完全摘除を行っている。
 MGに対する拡大胸腺摘除術の手技は安定しており、この時期における術後クリーゼの合併はなく、治療効果も80%以上の有効率を得ている。また、先天性嚢腫、後縦隔に好発する神経性腫瘍に対しては、胸腔鏡下手術を可能な限り適用し、術後のQOL向上に寄与している。

4)嚢胞性肺疾患
 自然気胸はほとんどが胸腔鏡下手術で行われており44例であった。平成6年(1994年)〜平成8年(1996年)は年間15例前後の手術件数であったが、第一線病院での胸腔鏡下手術の普及により減少してきており、最近は年間5〜7例となっている。平成5年(1993年)より開始した自然気胸に対する胸腔鏡下手術例は66例で、平均年齢は23歳、性別では男:女が15:1であった。胸腔鏡下手術後の同側再発は4例で6.1%の再発率となっており、標準手術として定着している。
 近年、慢性肺気腫に対する肺機能改善手術として肺容量減少手術が注目されている。胸腔の3分の1以上を占める巨大気腫性肺嚢胞11例、慢性肺気腫1例の計12例に嚢胞切除術を行った。従来、巨大気腫性肺嚢胞の手術適応には議論があったが、麻酔・手術技術の進歩に伴い安全に施行できるようになっている。12例の平均年齢は40歳と若年例が多いのにも関わらず、うち8例が術前Hugh-Jones分類でII度以上の呼吸困難、1秒率の低下と残気率の上昇を認めた。また8例が両側性で、胸骨正中切開による両側同時切除を行った。症状ならびに肺機能の改善を認め、今後さらに長期的な観察を要するが、少なくとも自覚症状、閉塞性換気障害を有し、嚢胞の増大傾向を認める症例に対しては、積極的手術の適応がある。

5)胸壁・胸膜疾患
 6年間での手術例数は17例で、うち胸壁腫瘍の切除術が12例と最も多かった。これら胸壁腫瘍のうち広範な胸壁欠損を生ずる8例に対して、EPTFE soft tissue patchと筋弁・筋皮弁を併用した胸壁再建を施行した。この術式は簡便性、組織親和性の面で優れ、弾性のある材料を用いることから胸郭の運動ならびに呼吸への追従性が良く保たれ、術後QOLの面からも有用である。

6)その他
 気管腫瘍に対して頸部気管の環状切除術を2例(腺様嚢胞癌、甲状腺癌)に、胸部気管の環状切除術を1例(髄外骨髄腫)に行った。また、外傷による胸部気管断裂に対して、体外循環補助下に修復術を行い救命し得た1例を経験した。
 近年、間質性肺疾患に関する知見の発展から組織診断の重要性が提唱されており、低侵襲な胸腔鏡下肺切除術の有用性が認識されている。当科においても呼吸器内科からの要望に応じて10例の胸腔鏡下肺生検術を施行した。今後内科的治療法決定の一手段として増加していくと思われる。

 

   
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