研究案内

当科の基礎研究

泌尿器科学と糖鎖生物学

泌尿器科では腎・尿路・男性生殖器および副腎などの後腹膜臓器の疾患を扱います。

細胞表面に発現する糖鎖は「細胞の顔」として、さらにシグナル伝達物質として重要な生理機能を有し、発癌、細胞の増殖、癌の転移・浸潤、発生と分化、精子形成、細菌感染、ウイルス感染、受精、炎症、神経の伸長、免疫など多彩な生命現象において重要な役割を果たしています。

このため、糖鎖はたんぱく質、核酸に次ぐ第3の生命鎖としてポストゲノム時代の注目の分子となっています。意外にも「癌、発生、精子形成、感染、受精」など、泌尿器科学と糖鎖生物学の共通した対象領域が多いことに気が付かれましたか?

特徴ある研究

臨床現場の問題点を基礎研究を通して解決するために、当講座では泌尿器疾患の研究に糖鎖生物学、分子生物学、免疫学の手法をとりいれています。糖鎖と泌尿器癌、糖鎖と自然免疫に関する研究は一流英文誌に掲載され、世界レベルの研究を展開しています。国内外の研究機関との共同研究も盛んで、内外の著名な研究施設への留学も随時可能です。

リサーチ

当教室では糖鎖研究に力を入れて行なっています。基礎研究から臨床データ解析まで一貫して研究を行い、我々しかできない研究に力を入れています。既に新たな前立腺癌腫瘍マーカー(S2、3PSA)を発見し、臨床応用に向け研究を進めています。

糖鎖研究

糖鎖とは

細胞表面の毛のようなもの。細胞外(外界)とのアンテナ

PSAの糖鎖変異を用いた前立腺癌過剰診断・過剰治療の回避

PSAによる前立腺癌の過剰診断・過剰治療は世界的に重要なテーマです。前立腺癌はPSA検査で見つかりますが、PSAがそれほど高くない状態(PSA 4-10ng/mL)では、癌でない可能性が60-70%もあります。しかし、現在の技術では生検する以外見分ける方法がありません。また、大半の前立腺癌はゆっくり進行し生命に害のない癌(=大人しい癌)とされていますが、中には悪性度の高い癌(悪い癌)が潜んでおり、採血や画像検査からそれらの判別をすることは困難でした。
そこで我々は、PSAの糖鎖変異を用いて癌のPSAと正常のPSAを見分ける方法を2つ開発しました。我々はそれらをS2,3PSA, PPSA-Giを呼んでいますが、この手法は前立腺癌診療の常識を大きく変える可能性があります。臨床応用に向け、現在研究継続中です。

Yoneyama T. et al Biochem Biophys Res Commun. 2014 Jun 13;448(4):390-6.
Ishikawa T. et al. Int J Mol Sci. 2017 Feb 22;18(2).
Hagiwara K. et al. Int J Mol Sci. 2017 Jan 26;18(2).
Hatakeyama S. et al. Int J Clin Oncol. 2017 Apr;22(2):214-221.

血清糖鎖解析を用いた泌尿器癌新規バイオマーカーの開発

泌尿器癌で有名な腫瘍マーカーは前立腺癌のPSA、精巣腫瘍のHCGですが、その他の泌尿器科癌に有用な腫瘍マーカーはまだ発見されていません。そこで我々は血清糖鎖変異を用いて、尿路上皮癌(腎盂尿管癌や膀胱癌)、腎癌、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)、精巣腫瘍で検討しています。既に、いくつかの報告をしており、診断精度の向上と糖鎖変異メカニズムの解明を研究中です。

連鎖自動分析装置

  • 血清中の糖鎖を、ビーズを用い回収する技術。
  • 糖鎖のみを分離し、質量分析装置で同定できる。
腎癌患者の生命予後

尿路上皮癌の解析

前立腺癌 (Ishibashi Y. et al. Prostate. 2014 Nov;74(15):1521-9.)
腎癌 (Hatakeyama S. et al. J Urol. 2014 Mar;191(3):805-13.)
尿路上皮癌 (Oikawa M. et al. Eur Urol Focus. 2016 Nov 22.)
精巣腫瘍 (Narita T. et al. Cancer Med. 2017 Apr;6(4):739-748.)

腫瘍血管内をターゲットとした特異的治療の開発

現在の抗がん剤治療が抱える弱点は、細胞毒性の強い薬剤を全身投与する点にあります。これら副作用を減らし高い抗腫瘍効果を得るためには高濃度の抗がん剤をがんのみに到達させる必要がありますが、現在効果的に癌だけに薬剤を運ぶ手法は臨床応用されていません。私たちは、がんの腫瘍血管に選択的に結合するペプチド(IF7ペプチド)を世界に先駆けて開発し、抗がん剤との組み合わせによる腫瘍血管内皮細胞を標的とした治療効果を証明し、臨床応用に向け研究を続けています。

IF7の癌特異性

Hatakeyama S. et al. PNAS 2009 Mar 3;106(9):3095-100.
Hatakeyama S. et al. PNAS 2011 Dec 6;108(49):19587-92.
Hatakeyama S. et al. Methods Mol. Biol. 2013; 1022: 369-86.

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