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めざすもの

 病理診断学には医学としての役割と医療としての役割があります。
 医学においては、病理組織(顕微鏡、電子顕微鏡での組織や細胞観察)を基盤にして疾患や病態の解析を行うことです。病理組織は真実の姿をあらわしています。しかしそこからいかなる真実を取り出し全体の病態を構築できるかは観察する者の技量によります。真実を取り出すためには遺伝子や蛋白の解析と言った分子生物学的な手技も必要です。しかしこれらのデータのみに依存した考察を行うと、全く真実の病態とは異なった解析に繋がる可能性があります。ここに組織変化に基盤を置く病理の重要性があるのです。逆に言うと、常日頃から病理組織を観察している私たちは病態解析の方向性を見付けやすいという強みがあります。
 医療における病理診断学の役割はどんどん大きくなってきました。つい最近までは病理診断学は病変の正確な組織診断をすればそれで医療が成り立っていました。しかし医療の進歩は病理学に対して、正確な診断は勿論、治療上必要な様々な組織情報の提供を要求してくるようになりました。縮小手術、より適切な治療薬の選択、移植医療・・・これら先進医療は詳細な病理組織情報なくしては成り立たないのです。
 病変を正確に診断するには病態を解析する姿勢が欠かせません。解析の為にはそれぞれの研究手技が切り口となります。この要素が無ければ症例ごとに多様な病変の診断に対応できません。また病理組織変化に基づいて疾患を解析することは新たな疾患概念への発展や治療および診断の発展へと繋がります。よって大学の病理診断学は医学としての役割、医療としての役割双方を不離一体として追求することが大切です。

 医療がどんどん細分化・専門化されるなかで、日本の病理医は全科にわたって最新の診断基準や評価法、そして治療法について知っていなければなりません。また、全身が診れなければ局所を診ることはできないという課題を常に背負わなければなりません。すなわち、一般性と専門性をともに維持したまま最新医療について行く。このことは最早一人では不可能となってきました。従って、教室間の垣根を越えて病理に属する人材みなが集まってそれぞれの専門分野を勉強し合える環境が必要だと考えています。
 一般性と専門性両方を持ち、そして病態を自分自身の研究手段で解析する能力を持つ、このことを私たちの教室では重視します。

 病理を除いた一般にいう臨床医療は、少なくともその一部において不確実性要素を完全除外することは出来ません。病理診断学は真実の姿を表す病理組織から組織情報を取り出して臨床医療に還元し、かつ病態解析に役立てるのがその責務です。よって、臨床医療と病理診断学が密接に結びつくことによってお互いの向上の図り、大学全体の医療・医学の質的向上に貢献する、このことが教室の命題です。いかなる連携がいかなる効果を生むか、まだまだ未開拓の分野です。病理診断学は医療・医学の発展に貢献できる様々な潜在要素を持っており、それを発掘し発揮して行きたいと考えています。
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  • 当ホームページは、弘前大学大学院医学研究科 病理診断学講座が管理しています。
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