教授挨拶

弘前大学大学院医学研究科消化器血液内科学講座の福田です。我々の教室の研究や診療内容に関する情報をリアルタイムに発信できればと考えております。時々、ご覧になって頂ければ幸いです。

私たちの診療科は、伝統的に若手医師の臨床修練に重点をおき、研究面でも臨床に役立つような研究テーマを取り上げて参りました。消化器内科、血液内科、膠原病内科ならびに心療内科を中心に担当しておりますが、「専門臓器にとらわれず人全体を診る臨床医学」の実践を目標としております。現在、24-25名の医師(大学院生含む)が大学病院における診療を担当し、他に30名以上の教室員が青森県、北秋田の関連施設で地域医療を担当しています。

平成16年から卒後初期研修が必修化されました。この制度に端を発した医師不足、医療崩壊が大きな社会問題となり、10年以上経過した今でも地方の医師不足は改善されていません。当初は、訴訟のリスクの高い産婦人科医の医師不足、救急医療の崩壊が注目されましたが、青森県では臨床の根幹である内科医、外科医や小児科医の不足も問題となっています。研修中の先生方やこれから研修を始める医学生の皆さんの責任では決してありませんが、この制度の負の側面についても、是非考えてみてください。とくに、初期研修医の大学離れが顕著で、とくに弘前大学のマッチング率が低率であることは皆さんご存じの通りです。よく大学の研修では、common disease が診られない、症例の偏りがある・・・等々言われますが、一部有名大学病院のマッチング率が100%であることを考えると、研修の中身だけではないように思えます。地方大学の出身者が有名大学の初期研修に集中しており、有名大学への憧れみたいなものがあるのでしょう。ところで、青森県内の状況はどうでしょう。医師不足が顕著な県内の多くの自治体病院が、医師不足解消の目的にこの研修病院に名乗りを上げました。多くの研修医を獲得すべく、待遇面の競争に拍車がかかり、給与面では信じられないような額を提示する病院も見受けられました(大学病院の倍額)。弘前大学のマッチング率が低率である最大の原因は、この待遇面(給与)の差と思われますが、大学の給与を上げることは簡単には出来ませんので、しばらくはこのような状況が続くように思われます。

臨床医としての最初の一歩である初期研修期間に、医療全般を浅く広く経験・実践することは意義深いことであることを否定するものではありません。より有意義なものにするためには、医師としての将来像まで決定しかねない、非常に重要でかつ貴重な2年間であるという自覚が不可欠だと思います。自ら考え、実践する能動的な研修でなければ、その目標を達成できないはずです。これから研修を始める卒業生(予定)の皆さん、目先の待遇などに惑わされることなく、優れた人格、広い知識、多くの経験と行動力を持ったよい指導医のもとで、実りある研修を目指しましょう。

卒後初期研修が終了した後、ご存じのように平成29年度から、新・専門医制度による専門医研修がスタートします。新たな専門医制度の中で、大学の担うべき役割は何なのでしょうか? 勿論、中央と地方ではかなり異なることは言うまでもありません。弘前大学では、どの診療科も専門性の高い診療を行っていますので、最短であらゆる領域(基盤診療科全19領域)の専門医の取得ができるようなプログラムが準備されています。我々が関係する内科専門医においても、各診療科が連携を強化し、基盤となる内科専門医を早期に取得し、サブスペシャリティ領域(消化器内科、血液内科、リウマチ内科など)の研修にスムーズにつながるようなプログラムを準備しています。言うまでもなく、専門医取得は単に専門領域の医師としての一定の水準を確認するプロセスと考えるべきであり、決してゴールではありません。内科専門医、サブスペシャリティ領域専門医取得後も、大学や県内の大小の関連病院と連携しながら、臨床医としての腕を磨くことができるのも、当科の魅力の一つと考えています。

当科では、積極的に大学院への進学をお奨めしています。学位取得までの過程で培われる論理的思考や深い探究心は、必ずや皆さんの将来の臨床に活かされると信じるからです。新・内科専門医制度においても、大学院への進学を念頭においたプログラムを準備するなど、皆さんの多様なニーズにお応えすることができるよう準備しております。「学位か専門医か」などと二者択一で考える必要はありません。是非、両方の取得を目指してください。それを達成できるのが大学のプログラムの最大の特徴ともいえます。

弘前大学の内科学講座が提供する新・内科専門医のプログラムにつきましては、大学病院のHPを、サブスペシャリティ領域専門医の研修システム、研究内容については、当科のHPをご覧になってください。

最後に、より多くの皆さんが我々の仲間となってくれることを熱望して、私の挨拶と致します。

平成28年1月27日