教室沿革

 我が国ではこれまで、がんの発生臓器に関連する臓器別診療科のもとで、がん薬物療法が行われてきました。しかし、近年の分子生物学の飛躍的な進歩により、専門的な知識や技能が必要とされる薬剤が次々と臨床導入されたため、質の高いがん薬物療法を実践するためには、幅広い臓器のがん薬物療法を専門的に実施することが要求されるようになりました。そこで、臓器横断的に薬物療法を専門に行う部署開設の機運が高まり、消化器血液内科学講座の癌化学療法グループを講座として独立させる形で平成20年1月に大学院医学研究科腫瘍内科学講座および附属病院腫瘍内科が新設されました。この前身である癌化学療法グループは現在三沢病院指定管理者である坂田優が昭和50年代前半から平成にかけてグループ長を務め、造血器腫瘍から消化器腫瘍を中心とした種々の固形腫瘍に対する化学療法の実践、多施設無作為比較試験による化学療法の研究、新規抗がん剤の臨床試験を積極的に行い、その基礎を確立しました。 


 平成20年1月腫瘍内科学講座開設時には、東北大学大学院医学系研究科附属創生応用医学研究センターから呼吸器腫瘍を専門とする西條康夫(現新潟大学教授)が初代教授として着任しました。入院病床は1病棟8階に10床、外来診察室は総合診療部・腫瘍内科外来として2室使用の形で診療開始され、現在に至っております。平成24年7月からは昭和大学医学部内科学講座腫瘍内科学部門から消化器腫瘍を専門とする佐藤温が二代目教授として着任し、現在に至っています。診療科として、昨年度は114名の消化器がんを中心とする固形腫瘍および60名の悪性リンパ腫の新患を受け入れました。扱う患者さんが全員悪性疾患ということもあり、初診時での病状説明には十分な時間をかけて患者さん自身と向き合うようにしております。臨床試験に積極的に参加し、将来における科学的根拠の創造に邁進しています。同時に、緩和医療の実践を行っております。


 当科はがんを扱う各診療科が利用する附属病院外来化学療法室および化学療法プロトコール管理の統括を行う診療科としての責務も果たしています。がん拠点病院として実施義務のあるキャンサーボードについては、専任の事務職員を確保し、放射線科、腫瘍内科、緩和ケアチームをコアメンバーにして平成27年3月から週2日開催で稼働しました。各科一同が参加して治療方針を話し合い、その場で治療方針を決定できるシステムです。


  講座としても当初、臨床薬理学の一部として年間8コマの臨床腫瘍学講義を担当し、平成24年度からは臨床腫瘍学講義が一つの科目として独立し年間15コマ1単位を単独の講座で担当するに至りました。従来の医学部6年生のクリニカルクラークシップ、5年生の消化器血液膠原病内科と共同のBSLに加え、平成29年度から4年生の研究室研修も受け入れを開始しました。


 当講座は現在教授1、講師1、助手1、医員1の計4名に加え、講座受付事務2名、CRC1名で構成しております。まだまだ小さな講座ではありますが、人材育成と教育環境の整備、そして地域がん医療を支えるべく、各診療科及び各職種横断的チームを形成して来たるべき将来に向けて準備を始めております。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。