教授挨拶

Atsushi Sato 「腫瘍内科」は、がんの患者さんに対して臓器横断的に薬物療法を中心として治療する、抗がん薬物治療の専門診療内科です。日本では、生涯のうちがんに罹患する可能性は、約5割と推計されています。現在死因の第1位であり、毎年30万人以上の方ががんにより命を落とされ、さらにその数は高齢化と共に増加していきます。がん薬物治療は、外科治療、放射線治療とともにがん治療の中心的役割を担います。近年のがん薬物療法の進歩は著しい一方、その管理に専門的な技術が要求されております。また放射線治療と同様、治療内容の共通性に基づき、臓器横断的に担当することが望まれるようになりました。弘前大学では2007年に開設され、10年以上が経ちました。

 当科は、「理想的ながん医療の実践を通して形成される人間性豊かな医療社会」を目指します。その理念は「理想的ながん医療社会の構築への貢献」であり、そのための手段として、良質ながん診療の展開、がん医療に携わる医療人の育成、がん臨床研究の推進に邁進します。横断的に診療を実践していくため、各診療科連携のもと、協調的に集学的治療を実践管理しなければなりません。さらに包括的ながん医療の実践のためには、ほぼ全ての医療職が積極的にかつそれぞれが専門的に関与してもらう必要があります。また、がん医療の中心には患者/家族が位置します。私たち医療者と患者/家族、そしてそれを取り囲む社会が有機的につながったその先に答えがあるものと確信しております。

 薬物療法の対象となる固形がん患者さんの多くは治癒が期待できません。私たちは医学の進歩を追い続けています。だから、常に何か治る術はないかと悩みながら患者さんと共に診療をしていきます。けれども、一方医療は不老不死を目指しているのではありません。医療は、病によりもたらされた苦痛を和らげ、日常を支援するためにあります。がんを抱えても、たとえその治癒が期待できない状況でも、桜を、菜の花を、りんごの花を美しいと素直に喜び、祭りを愉しみ、秋の味覚を堪能し、冬でも暖かく寄り添い合えるそんな診療を志しています。がん医療を通じて、社会にも「生きている」の意味を投げかけながら、この青森の地を豊かな社会にすべく、がんばる所存です。

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