後期研修・大学院進学(3年目以降)

 

弘前大学医学部附属病院消化器血液シニアレジデントコース

※「弘前大学医学部附属病院 専門医養成プログラム」より抜粋
(PDFファイルが開きます)

 

  • コース長
    福田 眞作(消化器血液内科学講座 教授)
  • 研修責任者
    櫻庭 裕丈(消化器血液内科学講座 准教授)

 

研修期間中から学位を目指す場合と、臨床研修のみを希望する場合で状況が異なってきます。
臨床研修のみの場合は関連施設での研修が多くなり、比較的収入も多くなります。
学位取得を希望される場合には大学病院で非常勤医員として働きながら、学位を取得します。

 

研修の概要

後期研修では、当科の専門領域を中心とした研修が行われますが、実際には大学病院と当科の関連病院を半年から1年ごとに移動しながら研修を行います。
大学病院での研修中は共同で診療に当たっている腫瘍内科にも配属される期間があり、同科の知識・技術も習得できます。
知識や技術を習得するまでの年数には当然個人差が生じますが、以下に当科後期研修中の一般的な個別目標を記します。

 

  1. 上部・下部内視鏡検査、消化管造影検査、腹部超音波検査等の基本手技ができる。
  2. 貧血の適切な診断と治療、適切な輸血の適応の判断ができる。
  3. 出血性疾患の鑑別ができる。
  4. 癌化学療法の基礎知識、副作用について理解できる。

 

  1. 上・下部消化管のポリペクトミー、内視鏡的止血術、経皮経肝胆道ドレナージや内視鏡的逆行性胆管膵管造影などの検査・治療ができる。
  2. 造血器腫瘍の診断と重症度や予後の判断ができる。
  3. 炎症性腸疾患の診断と重症度判定ができ、治療指針を理解できる。

3年間の後期研修修了後は、各自の選択によって以下のようなより専門性の高い技術、治療について研修することができます。

  1. 内視鏡的粘膜下層剥離術、内視鏡的静脈瘤硬化療法、消化管・胆道ステント留置 など。
  2. 肝癌に対するRFAなどの局所療法 など。
  3. 固形癌、造血器腫瘍の治療 など。
学位(医学博士)の取得を希望する場合
  1. 大学院へ進学するか、研究生として教室に一定期間在籍することで学位取得が可能です。
  2. シニアレジデント開始時に大学院へ入学したい場合には、初期研修2年目の間に大学院を受験する必要があります。初期研修の2年目を大学院の1年目とすることも可能です。この場合は研修1年目に入学試験を受けなければなりません。
  3. 基礎講座での学位取得の研究を希望する場合は当該講座の方針によっては社会人大学院を認められないこともあり、その場合は大学病院からの給料がもらえません。社会人枠でない基礎大学院の在籍中は日本内科学会認定の研修期間にカウントされないので認定医取得が遅くなります。
  4. 教室の研究生になる場合は大学院とは異なり、論文審査で学位を取得します。年数も長くかかります(詳しくはお問い合わせください)。
後期研修の流れと収入
  臨床研修のみ 当科大学院 基礎系大学院
所属 収入 所属 収入 所属 収入
卒後
3年目
大学病院
関連施設
Aまたは
B+C+D+E
大学病院
関連施設
Aまたは
B+C+D+E
大学病院
関連施設
Aまたは
B+C+D+E
4年目 大学病院
関連施設
Aまたは
B+C+D+E
大学病院 B+C+D+E 基礎大学院生 D+E
5年目 大学病院
関連施設
Aまたは
B+C+D+E
大学病院 B+C+D+E 基礎大学院生 D+E
6年目 (後期研修終了) 大学病院 B+C+D+E 基礎大学院生 D+E
収 入

 

  1. 関連施設の給料
  2. 大学病院の日給
  3. 大学病院日当直料(月3-4回)
  4. 定時パート(週1回)
  5. 臨時パート(月1-2回) 大学にいる場合は夏休み期間中の関連施設の手伝い1週間
    大学にいる場合は夏休み期間中の関連施設の手伝い1週間

    注)大学院の入学金・授業料については本学大学院医学研究科HPをご覧ください。

 

取得できる専門医

日本内科学会認定内科医・専門医
日本消化器病学会専門医(日本内科学会認定内科医取得後)
日本消化器内視鏡学会専門医(日本内科学会認定内科医取得後)
日本大腸肛門病学会専門医
日本肝臓病学会専門医(日本内科学会認定内科医取得後)
日本血液学会専門医(日本内科学会認定内科医取得後)
日本リウマチ学会専門医(日本内科学会認定内科医取得後)
日本心身医学会専門医  など

各学会認定期間経過後に所定の条件を満たせば受験可能です。
内科認定医取得後でないと取得できない専門医が多いですから、内科認定医になることが肝心です。詳細は各学会ホームページを参照ください。

経験できる治療・手技

①新患、救急外来患者の問診および診察の基本
②炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の管理と治療
③食道癌、胃癌、大腸癌などの消化管悪性腫瘍の診断と治療
④肝胆膵悪性腫瘍(肝癌・胆管癌・膵癌)の診断と治療
⑤急性肝炎、慢性肝炎などの肝疾患の診断と治療
⑥急性膵炎、慢性膵炎などの膵疾患の診断と治療
⑦造血器悪性腫瘍、各種貧血、凝固異常などの血液疾患の診断と治療
⑧上部および下部消化管内視鏡、内視鏡的胆管膵管造影
⑨種々の内視鏡治療とその管理
⑩腹部超音波検査
⑪消化管X線検査
⑫骨髄穿刺・生検検査、髄腔内抗癌剤注入
⑬肝生検

経験する症例数

通常の内視鏡検査は術者として約500例/年、治療内視鏡については難易度と各ドクターのレベルに応じて考慮します。腹部超音波検査は500例(術者、助手としてそれぞれ250例)/年、消化管造影検査は胃・食道が100例(術者30例、助手70例)/年、大腸が200例(術者、助手としてそれぞれ100例)/年、小腸が10例(術者としては数例)/年、などです。
入院診療では、一般的な消化器疾患のみならず、例えば年間延べ60例前後の造血器疾患、年間延べ20~30例前後の炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)などのより専門的な知識を必要とする疾患を指導医とともに担当することができます。

 

プログラムの特徴

大学病院では、消化管・免疫、肝胆膵、血液の3つのグループによるグループ診療を行っており、各診療グループをローテート(3ヵ月ごと)しながら研修を行います。各グループは最低2名の指導医を含んで構成され、常にレジデントの指導にあたる体制をとっています。紹介患者が多いため、より高度な治療・手技やより専門性の高い知識を必要とする症例を数多く経験できます。
さらに、病棟診療において協力関係にある腫瘍内科もローテートすることで、固形腫瘍の化学療法の知識・技術も習得できます。

一方、当科の関連病院には大中小さまざまな規模の病院(後記)があり、多種多様な臨床経験を積むことができます。両者の特徴を生かしながら、高度で専門的な領域のみならず、プライマリーケアや内科全般に関する知識や技術を習得できるような研修を提供したいと思います。

 

  • 多く経験する疾患
    悪性新生物
    ①血液疾患 急性白血病、悪性リンパ腫、骨髄異形成症候群、慢性白血病、多発性骨髄腫など。
    ②消化器 肝癌、胃癌、大腸癌、食道癌、膵癌、胆管癌など。
    悪性新生物以外
    ①消化器 
    消化管出血、腸閉塞、クローン病、潰瘍性大腸炎、大腸ポリープ、消化管粘膜下腫瘍、胃十二指腸潰瘍、大腸憩室出血、急性大腸炎、急性・慢性肝炎、肝硬変・胃食道静脈瘤、急性・慢性膵炎、肝膿瘍、胆石、膵石症、原発性硬化性胆管炎など。
    ②膠原病 SLE、関節リウマチ、ベーチェット病、全身性硬化症、皮膚筋炎など。
    ③血液疾患 特発性血小板減少性紫斑病、再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血、発作性夜間血色素尿症、血友病、赤芽球癆など。
  • 多く行われている手技
    ①内視鏡的粘膜下層剥離術・粘膜切除術(ポリペクトミー、切開・剥離法も含む)
    ②内視鏡的止血術
    ③内視鏡的食道・胃静脈瘤硬化療法
    ④内視鏡的消化管拡張術(ステント挿入も含む)
    ⑤内視鏡的胃瘻造設術
    ⑥内視鏡的乳頭切開術(胆管結石除去、胆管・膵管ステント挿入も含む)
    ⑦内視鏡的経鼻胆管・膵管ドレナージ術
    ⑧内視鏡的異物除去
    ⑨経皮的ラジオ波焼灼術
    ⑩経皮的エタノール注入術
    ⑪経皮的胆管ドレナージ術
青森県立中央病院(730) 消化器内科、腫瘍内科、血液内科、リウマチ膠原病内科
青森市民病院(538) 消化器内科、血液内科
国立病院機構弘前病院(365) 消化器内科
青森労災病院(474) 消化器内科
つがる西北五広域連合
つがる総合病院(476)
消化器・血液・膠原病内科
弘前市立病院(250) 内科
市立三沢病院(220) 内科
むつ総合病院(487) 消化器内科、内科
国保黒石病院(290) 内科
大館市立病院(497) 消化器・血液・膠原病内科
つがる西北五広域連合
つがる市民診療所(0)
内科
大鰐病院(120) 内科
かなぎ病院(180) 内科
外ヶ浜中央病院(50) 内科
五戸総合病院(196) 内科
公立七戸病院(160) 内科
青森市立浪岡病院(227) 内科
鰺ヶ沢病院(100) 内科
公立野辺地病院(228) 内科
函館渡辺病院(668) 内科

平内中央病院(100)

内科
つがる西北五広域連合
鶴田診療所(0)
内科
※( )内は病床数

 

2年間の卒後初期研修では、医師としての基本的な知識と技能を学んできたと思います。これからの4年間は、内科医としての基本的な診療能力(態度・知識・技能)を習得していくと同時に消化器疾患、血液疾患、自己免疫疾患に適切に対応できる臨床能力を身につける期間となります。一流の臨床医になるためには、診療能力を身につけるための医学研究の経験が必要です。そして身につけた診療能力を十分発揮するためには、他の診療科医師、医師以外のスタッフとの協力、患者および家族との円滑なコミュニケーションが必要です。

私たちと一緒に研究・診療・仲間との協力を学び、様々な病気と闘える「強い内科医」を目指しましょう。

(消化器血液内科学講座 櫻庭 裕丈)