野菜の健康増進効果について
一般的に野菜や果物は、ビタミン、ミネラル、食物繊維、カルテノイド、ポリフェノールなどに豊富で健康に良いとされます。実際に、世界保健機構(WHO)は1日400g以上の野菜や果物を摂取することを推奨しています。
このようなWHOの方針は、疫学調査の研究に基づいて決定されます。疫学研究においては、野菜や果物の摂取状況が、疾患の発症とどのように関係するのかを20年以上に亘って大規模に追跡するのです。
しかしながら、WHOの方針決定に使用されていた疫学結果は、北米やヨーロッパで行われた疫学研究がメインでした。
地域によって、遺伝的背景も異なれば、食習慣や肥満率、寿命などにも違いがありますので、日本で政策決定するにはやはり日本で行われる疫学研究が必要です。

近年、日本における多施設共同による20年以上に及ぶ追跡研究の結果、野菜や果物の摂取が疾患による死亡率を減少することが示されました。
これらの疫学研究をもとに現在厚生労働省が推奨する野菜の摂取量は1日350gグラムですが、まだまだこれに足りていないのが現実です。
一方で、何故、野菜や果物の摂取が健康増進効果を有するのかについては特定するのが困難です。
食物繊維を介して腸内細菌叢を健康に保つという説、野菜の摂取が栄養の吸収を緩やかにするという説、直接的あるいは間接的に抗酸化作用を発揮するという説などが有望だと考えています。
著:伊東健(弘前大学大学院 医学研究科 教授)
【参考文献】
1)World Health Organization (WHO) (2018) Increasing Fruit and Vegetable Consumption to Reduce the Risk of Non-Communicable Diseases.
World Health Organization, E-Library of Evidence for Nutrition Actions (eLENA) World Health Organization, Geneva, Switzerland.
2)Inverse Association between Fruit and Vegetable Intake and All-Cause Mortality: Japan Public Health Center-Based Prospective Study.
Sahashi Y. et al. J Nutr. 152, 2245-2254, 2022.